女性の億万長者の50%以上があの国に?日本の先を行く中国女性の“働く意識”

「働き方改革」が叫ばれ、あらゆる制度の見直しや導入が進められている一方で、世界経済フォーラム(WEF)が世界各国の男女平等の度合いを示した「ジェンダー・ギャップ指数(男女平等ランキング)」で、2017年、日本は114位でした。日本は2015年の101位、2016年の111位からさらに3つ順位を落としているのが現状です。教育や平均寿命の分野では世界1位にも関わらず、労働賃金、政治家・経営管理職、教授・専門職、高等教育、国会議員数では、男女間に差が大きいとの評価で世界ランクがいずれも100位以下という結果となりました。

一方で、お隣の中国では、その格差ランキングにおいて日本よりも50以上高い順位にいるのはご存知でしょうか。同じアジアの隣国が、日本より早くジェンダーギャップに対して向き合い、変わろうとしているのです。中でも、中国都市部の労働現場では、「女性が会社のカルチャーを作る」…そんな取り組みがなされていました。 *都市部と農村部ではキャリアに関する姿勢が異なります。本記事では都市部の女性のキャリアに着目するものとします。

中国女性たちのキャリアの現状は?

中国女性のキャリアと聞いてどのようなものを思い浮かべますか?

人口約13億人、今やGDP世界第2位である中国。歴史的には日本と同じく儒教思想からの影響を受けていました。「女子と小人は養い難し(=女性と徳のない人間とは、近づけると図に乗るし、遠ざければ怨むので、扱いにくい)」という論語の言われもあるくらい、封建社会であった中国では女性達は不平等な扱いをされていました。しかしその後女性は中国の労働力の貴重な資源として認識され、毛沢東が「女性が空の半分を握っている」と、それまでの女性に対しての見方を変えるような発言をしています。

昨今の経済成長とともに、女性の学位取得と卒業後のハイキャリア志向はますます高まりました。現在中国の上級管理職の51%が女性で、北米またはEUの倍以上の数となります。2018年に行われたキャリアへの意識調査では、95年以降に出生した女性たちのキャリアに対する考え方の変化がよく現れる結果となりました。

有名なビジネス特化型ソーシャル・ネットワーキングサービス「LinkedIn(リンクトイン)」中国とロレアル中国がこのほど共同発表した「2018女性イメージ認知と家庭仕事観調査」によると、中国では「70年代生まれ」から「95後(ジウウーホウと呼ぶ、1995年から1999年生まれ)」までの世代で、キャリアをより多く求める女性が増え、95後の女性は特に強い自立意識を持っていることが分かった。
調査によると、95後の女性は「良妻賢母」像をあまり受け入れてはおらず、「経済的に自立したキャリアウーマン(58%)」または「特に自立心が強いクールな女性(19%)」像に憧れる女性が8割近くに上った。

また同調査では、妻がキャリアアップを望む際に、自らは家庭に専念できると表明した95後の男性は6割近くにも達していた。女性が家庭に入り込みすぎるよりも、自分の趣味や仕事を優先してほしいと考える95後の男性は、前の世代より多くなっている。今回の調査からは、より多元的な仕事観・家庭観が写り出されたと、Linked in中国責任者は指摘した。

<中国の情報局(新華網)より抜粋>

The economistよりhttps://www.economist.com/blogs/dailychart/2011/11/working-women

中国では高いキャリア意識が若い世代の女性に広がっています。そして女性だけではなく、多くの場合パートナーとなる男性の間にも女性の多様なキャリアが実現できるような価値観が広がっていることもわかります。しかしながら国営中国全国女性連盟(ASEAN)が2015年に実施した調査によると、大卒女性の87%が就職活動の際に差別を経験しているという調査結果も出ており、女性たち自身に意識改革が芽生えていても、現場ではギャップが生まれてしまっていると捉えることもできるでしょう。

では、実際のところ、どのような変化が起こっているのでしょうか。

女性がカルチャー変化を主導

FINAL TIMESの取材に対して、「中国の特にIT企業では、新たな企業文化を作り出しています」と、中国最大のライドシェアプラットフォームであるDidi ChuxingのプロジェクトマネージャーであるBianca Yinは話しています。

市場に変化とITブームは、民間企業の繁栄をもたらし、収入の伸びは国有企業をはるかに上回っている結果となりました。その経済的影響は、家父長制の文化を変化させるという声さえあります。

共産党の最高幹部には女性のリーダーシップというものは存在せず、女性が大統領になったことのない中国では、企業の影響が社会全体の男女平等にインパクトをもたらしているのです。

そしてBiancaは、「起業家レベルの女性がいれば、普通の女性達が活躍できるような機会、そして彼女達に希望をもたらすことができる」と話しています。同じ女性として、ロールモデルが存在していることはそれ以外の女性達を勇気付けることに繋がるのでしょう。中国で、優秀かつ経済的にも豊かな女性は珍しくありません。Hurun Reportによると、世界の78人の女性億万長者のうち、49人が中国に住んでいます

ゴールドマンサックスの前取締役であったDidiは、スタートアップを創業した際には幼い子供の母親でした。Didiの元で働いていた社員達は、そのようなロールモデルが活躍する姿こそが会社全体の士気を高めていたといいます。同社は女性ネットワークを作成し、女性向けのリーダーシップコースのローンチまで漕ぎ着けました。

中国では徐々に女性起業家が増えていますが、この流れは比較的新しいものです。女性が学びを深め、より良いキャリアを形成していくような流れはあったものの、女性が新たなビジネスを開始していくような流れはここ20年以内の話であるといいます。

男性のコーファウンダーとともに起業した郭さんは、彼女の同僚である男性達が受け入れやすいと判断したデータを会議で用いる工夫をしています。そして、ジム兼カフェを経営するShirleyさんは、顧客の半分以上は男性であることを踏まえ、コミュニケーションの方法や服装に気を使っているといいます。

このように、成功した女性でさえも依然として経営に試行錯誤しています。特に、金融業界といった男性優位の業界であればあるほどそうだといいます。全ての道が女性にとって開かれているわけではなく、まだまだジェンダーギャップが残っている業界があるのも事実です。

しかし、全体として中国の女性のキャリアに関する状況は前進し続けています。何よりも女性達自身の意識が向上していることが調査からわかります。

中国から何を学ぶことができるか

私たちは、日本以上にジェンダー先進国である中国から何を学ぶことができるのでしょうか。
筆者が感じた点を3点まとめると、

  • ①行政からのトップダウンではなく、企業の多様で新しいカルチャーを通じてジェンダー・働き方への意識を変えていく
  • ②社内だけではなく社外との繋がりを形成しながら、キャリア意識・将来設計の共有や個々人のリーダーシップ・スキルの向上を図る
  • ③女性だから、と女性視点に偏るのではなく、男女が協働しやすくなる状態に近づけるためのアクションを現場でトライアンドエラーする

 

 

ではないかと考えています。

1点目は、企業の持つ社会へのインパクトと可能性です。働き方改革など、国からトップダウンで実行するもの以上に、企業独自で取り組んでいることの方が多様性に富み、良い方向に変化し続けられると考えます。従業員にとって“良い”取り組みは、彼らの生活サイクルや価値観を変えていく力があります。

2点目は、社外コミュニティの重要性です。日本でも、昨今あらゆる社会人コミュニティが生まれていますが、自分の興味関心に合わせて飛び込むことで、同じ関心を持った他分野の人と知り合うことが出来ます。これによって、それまでなかったキャリアや生き方への価値観や、自身を見つめ直すチップスを得ることができるかもしれません。

3点目は、女性目線に寄りすぎないことです。女性のキャリアの話をすると、フェミニスト的に女性視点でしか物事を考えられなくなってしまう状態に陥りかねません。あくまで同等の立場で考えるべきであって、女性を優位に置くことがジェンダーギャップの解決方法であるはずはありません。女性が男性目線に翻ることは、彼女達自身の価値観を客観視するための1アクションではないでしょうか。

中国のSK-Ⅱの広告より。「私たちは単に結婚を求めるために結婚するのではない。そのような結婚をしても、幸せにはなれない。」


ジェンダー先進国といえば北欧が連想されやすいですが、近くに学びを得られる国があります。変わり続ける経済のもと、ジェンダー意識も変わり続けています。女性の起業という選択肢も以前以上に増している中国…同じアジアの国として、私たち日本は中国から学ぶことができるかもしれません。

 

参照:

【国際】世界「男女平等ランキング2017」、日本は114位で昨年より3位後退。北欧諸国が上位
https://sustainablejapan.jp/2017/11/02/gender-gap-index-2017/28847

日本と中国の女性の比較
https://www.cmu.edu/dietrich/modlang/student-organizations/polyglot/s2017/japanese/lu.pdf

China: ‘Women are creating a new corporate culture’
https://www.ft.com/content/cfceb3f6-f703-11e7-a4c9-bbdefa4f210b

Why China can be an exciting place for women
https://www.britishcouncil.org/voices-magazine/why-china-exciting-place-women

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