和田幸子さん|若いうちはどんどんやるべき!自ら立ち上げたサービスで家事と仕事の両立を実現した起業家のマインド

育休明けに直面した〝共働き家庭の家事問題〟。和田幸子さんは、多くの子育て世帯に共通するこの大問題を解決するため、共働き家庭・ひとり親世帯に向けたハウスキーパーのマッチングサイト「タスカジ」を立ち上げました。家事代行を依頼したい人と、家事を仕事にしたい人をインターネット上でマッチングさせる、ITを活用した家事シェアサービスです。自らも「タスカジ」を活用して家事と仕事の両立を実現した和田さんに、「タスカジ」立ち上げ当時のお話と、キャリア形成を目指す若い女性へのアドバイスを伺いました。

予定より10年以上早い“起業”の決断

「タスカジ」立ち上げの経緯を教えてください。

大学を卒業する直前ごろから、いつか起業したいと思うようになりました。50歳を目標においていましたが、ひととおりのスキルが身についたと見極めた30代後半、少し早いけれど起業にチャレンジしてみてもいいのではないか、と思い立ったのです。

「タスカジ」のアイデアは、まさに自分の体験から湧き起こったもの。育児休暇から仕事に復帰したとたん、家事と仕事の両立に悩む毎日が始まりました。

周りを見渡すと、共働きのファミリーはかなりの比率で同じ課題を抱えています。自分だけの問題ではない。共働き家庭における家事の担い手不足は社会課題だと気がつきました。

「この問題を解決するのは私しかいない。これまでに培ったITの技術を活用して、新しいライフスタイルの実現に必要な社会インフラを構築しよう!」

社会課題を解決することを通して世の中に貢献することを第一の目標に、これからの時代の家事シェアサービスを立ち上げようと決心しました。

「タスカジ」はスタート以来、急成長を続けていますが、どのような戦略を展開していったのですか?

設立当初、お金がなかったので、宣伝にお金をかけることができませんでした。でも、今にして思えば、それがよかったのです。

何もないところからリソースを一つひとつ選んで作っていくという楽しみももちろんありますし、制約の中でのチャレンジ、のようなことも楽しくて。

また、それ以上に、一生懸命頭を使ってアイデアを出して試行錯誤していると、思ってもみなかった成果が得られることが、たくさんあるのです。

たとえば、ユーザーを増やしたい時、広告を出そうと思うのが一般的です。その手段は間違ってはいないでしょう。でも、お金があれば誰でもできる施策を戦略として選んでしまうと、競争優位性は作れません。

そこを、「お金がないからクチコミを作って行こう」とか「クチコミが発生するような、特殊なメッセージを作っていこう」といった工夫をしたり、「大衆ウケはしなくても、わかる人だけにわかる、ちょっと尖がったメッセージにしてクチコミを発生させていこう」とか、自由な発想で思考を広げていくと、ビジネスとしてオリジナリティもあるし、それが競争優位性になっていく。そんな体験を初期のころ何度もしました。

ですので、手作り感や、お金で解決できないことをどのように解決するか、ということにチャレンジするのは、今でも会社の文化として大切にしています。

社会に爪痕を残す仕事

「タスカジ」のユーザーとして、どのようなメリットを感じていますか?

我が家の場合、主に掃除と料理の作りおきをそれぞれ別の方にお願いしています。何よりうれしいのは「夕飯、何にしよう」と考えなくてすむこと。自分で作っていた時は毎日、昼間からモヤモヤしていました。そのストレスから解放されて、本当に楽になりました。

後片付けも済ませてくれるので、仕事から帰ると爽やかな家が迎えてくれます。母親が心にゆとりをもっているほうが、子供にとってもいいでしょう。

起業してよかったと感じる時はどんな時でしょうか?

サービスインして2~3か月くらいたったころから、お客様に感謝のメッセージをいただくようになりました。起業の動機の一つに、社会課題を解決したいという思いがあったので、それが小さくとも少しずつ実現しているのを感じてとても感動したのをよく覚えています。

子育て中で時短勤務の方が「いいハウスキーパーさんと出会えたおかげで、フルタイムに戻っても大丈夫、という気持ちになれました」とか「昇進の話を断り続けてきたけれど、引き受けてもいいかな、と思うようになりました」というお声を伺った時は、女性のチャレンジしたい気持ちに火をつけられるようなサービスになっている、という手応えをはっきり感じました。

ハウスキーパーさんからも、同じようにうれしいお声をいただいています。

「自分は何もできないと思っていたけれど、家事が仕事になるなんて」

「予算や調理器具、ご家族の好みなどの制約のなかで、お客様のリクエストにどこまで応えられるか、考えるのが楽しい。家事ってクリエイティブな仕事ですね」

「自分の家事が、お金を生むプロフェッショナルのレベルにあることがわかって、本当に幸せ」

など、ただ食べるために働くのではなく、その人の人生にインパクトや変化を与えるような仕事になっているのだな、と感じています。

20代のうちは、がむしゃらにチャレンジを

若い女性に、人生の先輩からメッセージをお願いします。

やるかどうか迷ったり、興味はあるけど一歩踏み出せなかったりしていることがあるなら、若いうちはどんどんやったほうがいいなあ、と思います。

仕事を頼むほうは、20代の人に過大な期待はかけません。だから、うまくできるかどうかなんて迷わずに、まずは飛び込んで、チャンスをくれた人に感謝しながら、サポートしてもらいながら、どんどんやったらいいのでは、と思うのです。

もしかしたら失敗するかもしれないですけど、「すみません」と素直に謝れば、20代なら許してもらえます。次の機会に上手にできるようになればいいし、たとえまた失敗したとしても、経験値になりますから。

20代のうちは、ぜひがむしゃらにチャレンジしてください。そういう仕事のしかたができる唯一の世代ではないでしょうか。