リュウ・シーチャウさん | 人との出会いから得られた、予想していなかったいまのキャリア

2020年からレノボ・ジャパン合同会社でCMO(Chief Marketing Officer/チーフマーケティングオフィサー)を務めるリュウ・シーチャウさん。これまで数々の企業で活躍し続けてきた中で、自身のキャリア観には大きな変化があったと言います。今回は、仕事を選ぶ際に重視してきたポイントやライフステージの節目での決断方法についてお伺いしました。

「上司に言われたことをやる」新卒時代の出会いで変わった仕事の考え方

私は中国の高校を卒業した後、知らない世界に飛び込みたいと思い、治安も良く中国からも近い日本の大学に留学しました。その後新卒では日用品大手のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)に入社し、マーケティング部門に配属。当時は特にキャリアアップを目指すこともなく、効率よく働いていました。「上司に言われたことをやる」というスタンスで仕事をしていたように思います。

しかし2年目の評価面談で、上司に「ビジネスの結果が出ていない」と言われたことが大きな転機となりました。なんとなく仕事をこなせていても、会社にとっての利益を生み出していなければ評価が悪いのは当然です。結果の重要性に気が付き、マインドセットがガラッと変わりました。

そこからは仕事をするのであれば、とことんアウトプットや結果にもこだわるようになりました。自分は何を成し遂げるために時間を使いたいのか。1年後になりたい姿を決めたら、そこから逆算してどのように時間を使うかを日々考えるようにしています。

例えば「とりあえずいつもと同じように」という気持ちでミーティングに出席するのは、惰性で仕事をしている証拠です。一つ一つの仕事がもつ意味を考えると、毎日の行動だけでなく、結果も大きく変わってきます。仕事の成果を測るのは、その仕事にかける時間の量ではありません。仕事を淡々と「作業」としてこなしているだけでは、いつまで経ってもクオリティは上がらない。どれだけ仕事のクオリティを高められるか、結果を出すためにどれだけ想いを込められるか。常日頃から仕事の意味や目的を意識する重要性を教えていただきました。

毎日の仕事も転職も「ワクワク」を大切に

仕事や会社を選ぶ際に大切にしていることは「ワクワクするかどうか」です。私にとって楽しみながら仕事をすることはパフォーマンスを最大限に発揮する重要な要素だからです。

現在、レノボ・ジャパン合同会社でマーケティング統括本部統括本部長(チーフ・マーケティング・オフィサー)として務めていますが、新型コロナウイルス感染症が世界中で拡大したことで、パソコン市場にも変化が生じています。多くの国でリモートワークや在宅勤務、そして遠隔学習への移行が進み、レノボが主戦場とする市場は急速な需要の高まりを受けています。

多忙な毎日でも目の前の忙しさに対処するだけではチームも疲弊してしまいます。長期的に見て、パフォーマンスが発揮できる強いチームを作るにはどうしたら良いのか。成長した先にある「楽しみ」にフォーカスすることで、今の行動を楽しむことができるのです。

また、これまで数回転職をしてきましたが、会社選びも同じです。新たな環境でチャレンジしたいと思って転職したことや、結婚を機に、働き続けられる会社を選んだこともありました。どんな時も最後は「どちらが楽しめそうか」で決断しています。

パフォーマンスを最大限に発揮するには、仕事を「楽しむ」姿勢こそが不可欠です。仕事は楽しみながら「やりたいこと」を明確にして、「実現する」まで歩みを止めないことが大切です。

周りと比較せず、自分のキャリアを築き上げる

これまでのキャリアを振り返ってみると、私自身のキャリア観に大きな変化がありました。20代の頃は周囲と比べることが多く、同期を意識して「はやくマネジャーになりたい」という目標も立てていて。自分よりも地位の高い同期がいるとか、あの人は自分よりポジションが高いというものさしで、自身のキャリアを考えていたように思います。ですが30代前半で日用品・製薬大手のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の香港支社長を務めた頃から、昔ほど役職や肩書き、そして年収より経験をこだわるようになりました。

周囲を見渡してみても、自分と同じ境遇や経験をしている人あまりいないので比べる必要もありません。そんな状況で誰かと比べても、自分にとってプラスになるものはそう多くはない。そう感じてからは、とにかく集中して目の前の仕事と向き合うようになりました。

私はやりたいことにはどんどん挑戦する性格ですので、2020年には自分の会社も立ち上げました。何か形のあるものを作りたいという想いから、楽しい飲み会をサポートするサプリを自分で開発してオンラインで販売しています。私自身お酒を飲むのが大好きなので、本当にほしいと思う商品をゼロから手がけてみました。


未経験の領域や分野にチャレンジできる仕事は、将来のキャリアを切り開くうえでとても大きなチャンスです。やりたいことや挑戦したいことがあれば、ぜひトライしてみてください。今までにない刺激や知識、そして経験はすべて自分の糧になります。新しいものを積極的に吸収し続けていると、その後の人生はもっとワクワクするものになるはずです。