<2月4日セミナーレポート>10人に1人がかかる子宮内膜症。症状や治療法を専門医が解説!

2023年2月4日、株式会社QOOLキャリアは無料オンラインセミナー『楠原院長に聞く!  女性が知っておきたい子宮内膜症のサイン ~子宮内膜症と女性のライフステージ~』を開催しました。

子宮内膜症は、女性の10人に1人がかかる意外にも身近な病気。適切な治療を受けないと不妊の原因にもなります。本コラムでは、症状のチェックポイントや治療法など専門医の先生だからこそお話できる情報をお届けします。正しい知識を学び、早期発見や症状の改善につなげていきましょう。

※本コラムは、楠原ウィメンズクリニック院長 楠原浩二先生にいただいたお話をもとに一部抜粋の上、セミナー内容を要約したものです。本セミナーは株式会社QOOLキャリアと、葉酸や妊活サプリなどの美容健康食品を取り扱う株式会社ベルタとの共催です。また、嬉しい栄養素が簡単においしく摂れる新しいフードブランド「Minotte」を運営するリボン食品株式会社の協賛セミナーとなります。セミナー詳細はこちらからご確認いただけます。

子宮内膜症はどんな病気?

子宮は筋肉でできており、その中に子宮内膜という組織があります。卵巣から排卵した卵子は卵管に入り受精すると、卵管の動きで子宮にたどり着いて子宮内膜に着床します。つまり子宮内膜は受精卵を受け入れる「ベッド」です。

子宮内膜を作る組織は本来、子宮内にだけに存在します。しかし子宮内膜組織が、子宮以外の部位で増えてしまう場合があります。それらが卵管を逆流し腹部にばらまかれ、骨盤内部などで子宮内膜組織が発育することが、子宮内膜症の発生する原因と推定されています。

最も内膜症が発生しやすい部位は、子宮の裏側と直腸のあいだの空間です。この空間をダグラス窩と呼びます。次に多いのは、膀胱と子宮の面部分に挟まれた部分です。卵巣内部や子宮の筋肉部位に広がることもあります。

さらに卵巣内の内膜症が発育すると「卵巣チョコレート嚢(のう)胞」という病気に変化します。これは卵巣内の子宮内膜症が大きくなり出血し血液がたまった状態です。血液がたまった袋は「チョコレート嚢(のう)腫」と呼ばれ、中にはチョコレートを溶かしたような血液がドロッとたまっています。

子宮内膜症の症状とは?

子宮内膜症の症状は多岐にわたります。主な症状は、月経痛、月経血量過多、性交痛などがあります。とにかくほとんどの場合、お腹の痛みを伴うのがこの病気の特徴です。

1. 月経痛

特に多くみられる症状は月経痛です。子宮内膜症に特徴的なのは、10代ではあまり痛みを感じなかったのに、20代中頃から痛みが強くなる傾向があること。歳を重ねるごとに痛みがひどくなり、鎮痛剤が必要になるような状態です。また人によっては、お薬の量が増えていきます。

2. 月経血量が多い(過多月経)

月経の血の量が多いのも症状の1つです。レバーのような固まった血の塊が出てきたり、貧血を伴ったりします。

3. 性交痛

性交痛は、子宮内膜症の患者さん全員に起こるものではありません。この症状が強い場合には、性交渉そのものが困難になります。また膣の奥に痛みを感じる方もいます。この痛みのために性交渉ができず、不妊症に悩む方も珍しくありません。

4. 月経時下痢・排便痛

特徴的な症状として、月経期間中に下痢気味になることがあります。例えば、日頃から便秘傾向のある人は月経期に限ってお通じが良くなったり、下痢になったりします。排便痛は、直腸の周りにある子宮内膜組織によって直腸がすこし窮屈な状態になることから生じます。

5. 月経時以外の腹痛

日頃から耐え難い痛みではないけれども、腹部がなんとなくシクシクと感じられ、すっきりしなかったり、慢性的に骨盤に痛みがあったりというのも子宮内膜症によくみられる症状の1つです。

6. 不妊症

子宮内膜症を患う方の50%は不妊症になるといわれています。逆に、不妊症の方の20%は子宮内膜症を合併しているといわれてます。

子宮内膜症の発生頻度は?

子宮内膜症の発生確率は全女性の10%ぐらいではないかとされています。以下の円グラフは、月経痛がある人の子宮内膜症の保有率を示した調査結果です。この調査では痛みがある女性に腹腔鏡を使って診断したところ、70%の人が子宮内膜症でした。「生理痛が強ければ子宮内膜症かもしれない」と考えていいでしょう。

子宮内膜症の診断

まずは問診が大切です。一番重要なのは痛みの自覚症状です。内診では、触診で痛みやしこりの有無を確認します。

超音波(経膣エコー)を使えばチョコレートのう腫はすぐに発見できますが、超音波では発見できない骨盤子宮内膜症も多く存在します。このような場合は、超音波だけでは子宮内膜症かどうかは判断できないのです。

子宮内膜症の治療

子宮内膜症の根治は難しいのですが、子宮内膜症を今より進行させないことが大切です。

主要な治療はホルモン治療です。低用量ピルは排卵をストップさせ、子宮内膜を増殖させる卵胞ホルモンの分泌を抑制します。また卵巣に指示を与える役割を持つ脳の視床下部(ホルモン中枢)に直接作用するホルモン治療もありますが、副作用が強く、長期治療には工夫が必要です。

子宮内膜症の進行程度によって、下記画像の通りピルやジエノゲストまたはディナゲストなどを使った治療法が選択されます。

※編集部注釈:ジエノゲストは先発医薬品、ディナゲストは後発医薬品です。Gn-RHアナログ製剤は総称であり、この製剤群にGn-RHアゴニスト(点鼻薬)やGn-RHアンタゴニスト(内服薬、レルミナ)が含まれます。

手術を行うケースもあります。チョコレートのう腫は時に卵巣がんへと変化する可能性があります。特にのう腫が4センチ以上かつ40歳以上の方はその頻度が高まります。該当する方は年2回ほどのこまめな受診、もしくは手術が賢明です。

なぜ子宮内膜症が不妊の原因になるのか?

妊娠が成立するには、排卵された卵子を卵管の最先端部(卵管采)が卵管内にピックアップする機能が非常に重要です。しかし子宮内膜症が引き起こす骨盤内の組織の癒着により、このピックアップ機能が阻害されてしまいます。仮に卵管に卵子を取り込めたとしても、卵管の「卵子を運ぶ」ぜん動運動にも癒着が悪影響を及ぼします。また癒着の炎症反応も、卵子や精子に悪影響を及ぼします。

しかし、子宮内膜症であるから妊娠は困難だと落ち込む必要はありません。楠原ウィメンズクリニックで体外受精をした約1,100例のデータでは、子宮内膜症群の妊娠率は44.4%、それ以外の原因群の妊娠率は46.6%でした。ほとんど差はなく、子宮内膜症であってもかなりの人は妊娠が期待できるということです。流産率に関しても、ほぼ同確率です。

質疑応答

Q1. まだ妊娠を希望していないが、子宮内膜症がある人は今後どうしたらいいですか?

A1.  一度できた子宮内膜症を完治させるのは困難です。これ以上、症状が進まないように、あるいは縮小させるように持続的なホルモン療法がお勧めです。

Q2. 子宮内膜症で不妊症の場合、どちらの治療を優先すべきですか?

A2. まずは不妊治療を優先させましょう。子宮内膜症の治療の多くは排卵をストップさせるため、その間は妊娠のチャンスがなくなります。まずは勇気を出して妊娠・出産を目指し、子宮内膜症の治療は分娩後にスタートさせても遅くはありません。

Q3. 自分で子宮内膜症を予防する方法はありますか?

A3. 残念ながら予防法はありません。現代の女性は昔よりも初経(潮)年齢が低くなり、妊娠までの月経期間が長くなっています。その間ずっと排卵が起こり、女性ホルモンのエストロゲンが長期間出るので、子宮内膜症ができやすい環境となります。子宮内膜症が増えている原因の1つは、この女性の排卵周期の長期化が考えられます。

そこで予防法としてあえて挙げるのであれば、ホルモン量を抑えるために避妊も兼ねて、低容量ピルを飲むこと。これがご自分でできる予防法かと思います。

Q4. 子宮内膜症からチョコレートのう胞に変化しやすい体質はありますか?

A4. 誰でも子宮内膜症やチョコレートのう胞になる素因は持っています。ただ11、12歳で初経を迎えて、その後結婚してお産する35歳ぐらいまで毎月、月経がありホルモンにさらされています。ですから、体質よりも環境の方が影響が大きいのではないかと推察されます。

Q5. 生理で必ず右の太ももが痛くなり、鎮痛剤を手放せません。低用量ピルを内服しても改善せず。何か症状を軽減する方法はありますか?

A5. 実際に診察してみないとわかりませんが、骨盤の奥に発生する子宮内膜症(深部内膜症)という病状があります。また異所性内膜症といって、直腸や膀胱、肺などに内膜組織が転移し、想像を超える症状が出ます。例えば、生理中の血便や血尿や血痰も症状としてあります。もしかしたら太ももが痛いのも、子宮内膜症と関連があるかもしれません。専門医への受診をお勧めします。

Q6. 中学生の娘は生理期間中、通学さえも辛そうです。受診すべきですか? また病院選びのポイントはありますか?

A6. 従来、ティーンエイジャーは子宮内膜症を発症するには早すぎるといわれていました。しかし最近では10代でも子宮内膜症に悩む人は珍しくありません。受診をお勧めします。先ほどお話した子宮内膜症の症状と当てはまるかどうかも、目安として確認してください。

病院選びは難しいですね。強いて言うなら、産婦人科には様々な専門分野があるので、子宮内膜症を診療対象としてサイトなどで明記している病院や、キャリアを積んだ先生がいいのではないかと思います。

Q7. 子宮内膜症の場合、月経時の血量や色味や匂いに特徴はありますか?

A7. 月経は不要になった子宮内膜なので、一気に出るかダラダラ出るかによって色や粘度は変わってきます。そのため色や粘度は気にしなくてもいいと思います。月経量が過多、例えばレバーのような血の塊が出るようなら、子宮内膜症を疑う症状ですので気を付けましょう。月経量が多いと貧血になるので、もし機会があれば生理が終わった後に貧血かどうかを調べるのもいいでしょう。

まとめ

子宮内膜症は女性の一生に関わる厄介な病気です。しかし専門医とともに子宮内膜症と上手に付き合えば、ライフサイクルへの影響を最小限に抑えることができます。本コラムで得た正しい知識を活かし、症状への対応、不妊治療との両立、仕事への影響などの悩みを軽減させていきましょう。

株式会社QOOLは株式会社ベルタとともに、毎月「女性の人生の質を高める」セミナーを開催しています。セミナーでは、不妊治療や子育てなど女性の悩みに寄り添ったテーマを多く取り上げています。

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アーカイブ配信について

本セミナーはアーカイブ動画にて視聴が可能です。
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視聴期限:2023年3月31日(金)23:59まで
申込期限:2023年3月31日(金)16:00まで