<3月16日セミナーレポート>妊活/不妊治療に影響する「菌」があるってホント?産婦人科医と臨床検査の専門家が解説!

2023年3月16日、株式会社QOOLキャリアは、無料のオンラインセミナー「≪苅谷院長登壇≫ 妊活/不妊治療に影響する「菌」があるってホント?」を開催しました。

最新の研究により、妊活や不妊治療に影響することが明らかになった子宮内フローラ。検査と治療により、確実に妊娠率を上げることができる新たな選択肢として、注目を集めています。

本コラムでは、子宮内フローラと妊娠率や出産との関係について、湘南レディースクリニック院長の苅谷先生臨床検査の専門家であるVarinos株式会社代表の桜庭先生に、わかりやすく教えていただいた情報をお届けします。正しい知識を身につけて、健康な体を作っていきましょう。

 

目次

先生のご紹介

子宮内フローラとは?なぜ妊娠率や出産と関係するのか?

妊娠率は、子宮内の菌の集合体である子宮内フローラが影響しているといいます。子宮内フローラとは何か、なぜ妊娠率や出産と関係しているのか、分かりやすく解説していただきました。

子宮内フローラとは?

桜庭先生
最近まで、子宮の中は無菌だと言われてきました。つい最近のことなので、まだ産婦人科の先生のなかでも、「え、無菌じゃないの?」と驚かれることがあるくらいです。

最新の研究で、ラクトバチルスという良い菌が存在するということが明らかになり、さらに良い菌と悪い菌のバランスによって妊娠の成績に結構な差が出ることが分かりました。妊娠率は倍以上、生児獲得率も7〜8倍違います。この論文を受け、子宮内の菌環境を調べる検査を提供できれば、不妊治療にあたる医師や患者様の役に立てるのではないかと思い、子宮内フローラ検査を開発しました。

子宮内フローラと妊娠率や生児獲得率の関係

苅谷先生
人間の卵である受精卵は0.1mmと小さいうえ、子宮の中に宿るのはたった1つです。それに対して、菌は無数に存在しています。

最近の研究により、菌のなかには卵と共存できるものもあれば、卵に影響を及ぼしてしまうものもあることが分かりました。悪い菌によって、たった1つの卵が攻撃されてしまったり、免疫システムが乱されてしまう場合があるのです。

さらに悪い菌がいると、菌自体が熱を帯びてしまいます。子宮の中が熱っぽい状態になってしまうと、そこには赤ちゃんが宿りません。子宮の中は、受精卵に優しい状態を作っていきたいですね。

子宮内フローラ検査で何がわかる?

妊娠率や出生率に大きな影響をもたらすことが分かった、ラクトバチルス菌。この菌の割合を調べる子宮内フローラ検査とはどのような検査なのか、どのような方におすすめなのか、教えていただきました。

子宮内フローラ検査とは?

苅谷先生
子宮内フローラ検査は、子宮内膜の液を採取する検査です。ボールペンの芯よりも少しだけ太く、柔らかく曲がるものを子宮の入り口から入れていきます。多少痛みが出るという方もいらっしゃいますが、割と無理なく入れられる方が多いです。

当然私たちも子宮の向きなどを調べてからやってきますので、あまりグリグリ押し込まれて痛いということはなく、麻酔をかける方はほとんどいらっしゃいません。検査自体は1〜2分、準備も含めて5分くらいで終わります。受精卵を子宮に移植して戻すときの器具と似ているので、体外受精を経験された方がいらっしゃれば、大体イメージはできるかと思います。


桜庭先生
採取した検体は、チューブという入れ物に入れてラボに送られてきます。子宮の中の菌はすごく少ないため従来の培養法では菌を検出できなかったのですが、我々は検体から菌のDNAだけを抽出する方法で、微妙な菌も精度高く検出できるようにしています。

DNAは、ATGCの4文字からなる文字列でできていて、その配列によって何の菌がいるのか分かります。菌の種類と割合をグラフにして、医療機関にお戻しします。

どのような方におすすめの検査?

苅谷先生
私どものクリニックでは、体外受精で見かけ上の良好胚を2回以上移植してもうまくいかない場合は、皆さん是非調べてくださいとお伝えしています。1回うまくいかなかったくらいだと、たまたま運が悪かったかなという程度なんですけれども、2回目もうまくいかない場合には、受精卵の見かけは良くても子宮の環境が原因かもしれないので、確認しておきたいですね。

もちろん子宮の環境がよいことを確認してからスタートする方がよいので、ご希望がある方には、最初から検査をすることもあります。さらに子宮内膜症など、元々少し子宮内の環境が心配な方には、先に調べることをおすすめしています。

実際に検査を受けられた方のなかで、少し心配な結果が出る方は半分くらいいらっしゃる印象です。心配な結果の中でも程度があって、ラクトバチルス菌の割合が基準値まで少しだけ足りないという方もいらっしゃれば、完全にゼロの方もいらっしゃいます。ラクトバチルス菌の割合が90%以上あるかどうかが、今の判断基準となっています。

子宮内の菌環境は改善できる?

検査を行ったあとは、どのように治療を進めていくのでしょうか。湘南レディースクリニックで実際に行われている治療ステップや、論文で発表されている研究データを交えて教えていただきました。

湘南レディースクリニックでの治療法

苅谷先生
湘南レディースクリニックでは、ラボから送られてくる検査結果の結果に応じて、抗菌剤などの薬を処方します。抗菌剤には色々な薬があって、ほとんどが飲み薬です。まずは2〜4週間くらい薬を服用して、悪い菌を減らすところから始めます。そこからラクトバチルス菌を増やしていくという順番になりますので、治療期間は1〜2ヶ月くらいになります。

論文紹介

桜庭先生
論文のなかから、実際に治療を開始するとどのように菌環境が改善していくかというデータをご紹介します。

左側の棒グラフは患者さんの子宮内の菌のデータで、黄色がラクトバチルスの菌の割合です。上のグラフは治療前で黄色の割合が少ないのですが、抗菌剤などで適切な治療をしたところ、下のグラフのようにほぼ100%ラクトバチルス菌になりました。それぞれ治療法は違いますが、適切な対応をすることによって、ラクトバチルス菌を増やすことができることが分かっています。

苅谷先生
さらに子宮内の菌環境を改善したあとは、妊娠率が必ず上がります。もちろん子宮内フローラ検査だけではなく、受精卵の着床前診断なども組み合わせて、確率の良い卵を使っているという理由も含まれますが、いずれにしても妊娠率は必ず上がります。

ラクトフェリンとは?

子宮内フローラを改善するサプリメントとして、ラクトフェリンがあります。ラクトフェリンの働きについて教えていただきました。

苅谷先生
ラクトフェリンは元々、母乳に含まれている成分の一つといわれています。ラクトバチルス菌を増やすために、まず悪玉菌を減らす必要があります。悪玉菌は、増殖するときに鉄分を使います。その鉄分を悪玉菌に取られないために作られた成分が、ラクトフェリンです。

サプリメントの働きすべてを理解できなくてもいいと思いますが、このような良いサプリメントがあると覚えておくと良いと思います。

子宮内環境のために良い食生活や生活習慣とは?

子宮内環境を整えるために、普段の生活の中で私たちができることはあるのでしょうか。苅谷先生に教えていただきました。

食生活・生活習慣病

苅谷先生
一番大切なことは、元気で健康でいてもらうことです。そのために、喫煙されている方がいらっしゃれば、完全に禁煙しなさいとは申しませんが、少なくとも減らしていくと良いです。食事も偏らない方が良いでしょう。ストレスをためずに、健康な状態でいることが一番だと、私はいつも思っています。

Q&A

Q.子宮内フローラ検査費用はいくらくらいですか?何回検査した方が良いですか?

A.
苅谷先生
我々のクリニックでは50,000円で設定しています。決して安い検査ではないので、なかなか何度も検査するというのは難しいかもしれません。ただ、先進医療として認められている検査です。保険適用外の自由診療にはなりますが、体外受精や一般不妊治療のなかに一緒に組み込んでよいものとされています。

余談ですが、生命保険の中に先進医療特約が入っている方は意外と多くいらっしゃいます。一般的にはがんの治療を想定して組み込んでいる方が多いかと思いますが、このような不妊治療の検査も先進医療です。一度、ご自身の生命保険を見直してもらうと良いかもしれません。

桜庭先生
東京都や三重県など、自治体が補助を出してくれるところもありますのでチェックしてみると良いでしょう。

Q.一般的には、何回体外受精をしたら、子宮内フローラ検査をお勧めされるのでしょうか。

A.
苅谷先生
もちろんスタートから検査して、安心して受精卵の移植を進められるのが一番です。ただ費用もかかる検査ではありますので、良い卵を移植できた回数によって決めていただくと良いと思います。2回くらい良好な卵を使って移植してもうまくいかなかったときには、是非検査してみると良いでしょう。

ただ、なかには得られた受精卵の個数が少ない方もいらっしゃいます。貴重な卵である場合には、是非一回目の移植をする時から調べられると良いと思います。

Q.どのような受精卵が、良い卵と言えるのでしょうか。

A.
苅谷先生
胚盤胞になると、A、B、Cのグレードがつきます。内側の赤ちゃんになってくる部分と、外側の部分で、組み合わせて評価します。BB以上、つまりAA、AB、BA、BBを、見かけ上の良好胚と捉えています。これらの良好胚を2回以上移植すると、遺伝子的にも良い卵が含まれている可能性が高いと考えられます。まずは良好胚の移植を1、2回試してみて、うまくいかなければ子宮内フローラ検査を受けてみると良いでしょう。

Q.初めて採れた受精卵のグレードがACで、珍しいと言われました。Cの部分を良くするために何かできることはありますか?

A.
苅谷先生
アルファベットの先に来る方が赤ちゃんの本体になってくる方で、後に来る方はそれ以外の部分になるところですので、ACというのはCAよりも良いといえます。

今の情報だけではお答えしきれないですが、いくつかある卵の中の一つがACなのか、1つだけ採りにいった卵がACだったのかどうかで、判断は全然違ってきます。複数の受精卵がある場合、ACは悪いと思わなくて良いと思います。もし一つしかない場合、治療方針を考える上では気になるところです。他にもできてくる卵が良いのかどうかがポイントになってくると思います。どうしても人間の卵は全てが妊娠する卵ではないので、一つにこだわりすぎず、もう少し多くの卵が見られたときに全体の一つとして捉えられると良いでしょう。

また、ACのうちCの部分を良くしようとするのは、全く考えなくて大丈夫です。初めて採った卵がACという方も多くいらっしゃいます。ACの卵で妊娠した方もいらっしゃいますので、期待を持って進められると思いますし、すぐに治さないといけないレベルではないと思います。

Q.子宮内の菌環境改善のために、普段からできることはありますか?

A.
桜庭先生
喫煙はネガティブなデータが出ているので、できればやめた方がよいでしょう。

また、腟の洗いすぎも問題になっています。腟の中に菌がいるのが正常な状態なのですが、洗い過ぎてしまうとラクトバチルス菌も消えてしまいます。そうするとバリアがなくなってしまうので、カンジダが増えて痒みが起きたり、粘膜が傷ついて感染症になったりすることがあります。

苅谷先生
予防的に普段からラクトフェリンのようなサプリメントを飲んでおくのもいいかもしれません。ラクトフェリンで子宮内の環境を改善した患者さんのなかには、受精卵を戻すより早く、自然妊娠された方もいらっしゃいました。

Q.ラクトフェリンを飲んで妊娠したら、その後はいつまで飲み続けるべきですか?

A.
苅谷先生
子宮内環境が改善すれば妊娠率や出産まで至る確率も上がるんですが、やはり初期流産というケースもあります。元々私は習慣流産という分野を専門で研究していたのですが、雑菌による流産というのもあり得るんです。腟の中の菌は妊娠後もチェックしていきたいので、私どものクリニックでは初期の胎盤が完成して安定期と呼ばれる13週までは、必ず皆さんに飲んでいただいています。

それ以降、長く飲んでいただくのも流産や早産の改善につながっていきますので、プラスアルファの周産期管理という点では非常に有効だと思います。

Q.ラクトフェリンを飲むと良いのは、女性だけでしょうか。男性の精子の質にも影響があるのでしょうか。

A.
苅谷先生
性交渉すれば菌は少なからず移動するので、男性もケアしなければいけないと思います。ただ研究は進んでいるものの、男性の効果に関するデータがまだないので、クリニックでも男性に処方したことはまだありません。おそらく今後、研究が進んでいくと思います。

Q.子宮内フローラ検査の結果、98%がラクトバチルス菌でした。残り2%の悪い菌のために、治療をした方がいいでしょうか。

A.
苅谷先生
ラクトバチルス菌は100%を目指すものではありません。90%の水準を超えていれば良好と捉えて、気にしなくていいと思います。

Q.子宮内フローラ検査の結果、バクトバチルス菌がゼロでした。不妊治療の病院に通えない場合、サプリメントだけでは意味がないでしょうか。

A.
桜庭先生
生きたラクトバチルス菌のサプリメントなども売られていますので、全く無理ということはないとは思いますが、やはり近道は医療機関に行くことだと思います。

ラクトバチルス菌が少ない場合にも2つのパターンがあります。本当にラクトバチルス菌が存在しない場合と、悪い菌が増えたから少なくなっている場合です。後者の場合には、医療介入しないと解決が難しいでしょう。

苅谷先生
私も同じ意見です。もちろんご自身の努力で改善していれば良いのですが、改善したかどうかというところも確認できた方がいいと思います。遠方などのご事情もあるかとは思いますが、無理のない範囲で受診されると良いと思います。もちろん、先んじてラクトフェリンを飲むのも良いと思います。

Q.ERA、EMMA、ARICE検査との違いは何ですか?

A.
苅谷先生
ERA検査というのは、受精卵がなかなか着床してくれない際に、子宮の中の組織を採って、生理周期の何日目に受精卵を子宮に戻すと妊娠しやすいかを調べる検査です。一般的には、受精卵が育った日数に合わせるので、例えば3日目の初期胚の段階であれば、生理周期の高温期に入って3日目に移植し、胚盤胞であれば高温期に入って5日目に移植しますが、移植するタイミングを少しずらした方が妊娠しやすいのではないかという考えから、ERA検査が始まりました。

ERA検査を肯定的に捉えている先生もいらっしゃいますが、私はどちらかというと否定的です。なぜなら、受精卵を戻す日が一日ずれたところで、急に環境が変わるとは考えにくいからです。実際にクリニックでは、患者さんのご都合で移植の日をずらさなければならないことも多々ありますが、それによって結果が悪くなることはありません。

さらに最近では、ERA検査を実施した後に妊娠率が下がってしまったという例や、ERA検査によって子宮内フローラ環境が乱れたという例も報告されています。検査費用も20〜25万円と高く、効果との兼ね合いをみると積極的には受けなくて良いかと思います。

私は25年くらい不妊治療の現場におりますが、ERA検査のように廃れていく検査もあるんです。当時は人気でも、結局意味がないことが分かったという検査も沢山ありました。子宮内フローラ検査はこのような進化のなかでも廃れないと思っています。

EMA検査とARICE検査は、子宮内フローラ検査と似た検査ではありますが、精度は子宮内フローラ検査の方がかなり高いと思います。他にも色々な検査があると知っておくだけで良いかと思います。

Q.着床や妊娠にとって悪い菌とは、どのような菌ですか?

A.
苅谷先生
ガルドネラ菌のほか、エシェリヒアコリ菌という大腸菌は、悪い菌として頻繁に検出されています。腸にいる菌が悪ければ、子宮にも一定の確率で悪い菌が入ってしまっていると考えられます。

ガルドネラ菌は、25年以上前に私が医者になったばかりの頃には、腟の中にいるべき正常な菌だと言われていました。それが悪い菌だと言われるようになって、ラクトバチルス菌を増やすべきだと言われるようになったのは、本当にここ10年くらいの話です。こうやって一つ一つ研究が進んでいくことで、医療に役立っていくといいですよね。

他にも、プレボテラ菌やアトポビウム菌や、ストレプトコッカス菌も、悪い菌の仲間だと考えられています。最近の研究では、マイコプラズマやウレアプラズマも、早産に関わる悪い菌だと分かってきました。妊娠前から悪い菌はいない方がいいので、検査しておくと良いと思います。

Q.良い不妊治療クリニックの見分け方を教えてください。

A.
苅谷先生
治療のバリエーションが豊富なクリニックが良いと思います。どうしてもお医者さんにはそれぞれこだわりがあるのですが、この方法しかやりたくないからこの方法でやっていますというクリニックでは、可能性が狭まってしまうことがあります。例えば、複数の卵を採取するために排卵誘発法をするクリニックもあれば、一個に絞って単一卵周期採卵法をするクリニックもありますが、どちらか極端ではない方がいいと私は思っています。

実際に私どものクリニックでは、このようなクリニックから転院してくる方も多く、「前の病院では、卵を一つしか採ってくれませんでした」「前の病院では、排卵誘発をやってくれませんでした」とおっしゃる方もいます。よく聞いてみると、AMH(アンチミューラーホルモン検査)をやらずに、単一卵周期採卵法を続けてきたといいます。それだと、患者さんに合っていないということもあるんです。私も単一卵周期採卵法は患者さんによってはやりますが、患者さん一人一人に応じて治療の手を変えていけるところを選ぶと良いと思います。

まとめ

最新の研究により、子宮内のラクトバチルス菌が妊娠率や出生率に大きな影響を及ぼすことがわかりました。子宮内フローラ検査の結果、もし子宮内の菌環境が悪かったとしても、専門医とともに適切な検査・治療を行えば、確実に妊娠率を上げることができます。本コラムで得た正しい知識を活かし、不妊治療に活かしていきましょう。

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