支払うお金が2倍も違う? 退職時に知っておくべき健康保険の選び方

これまで社員として働いてきたのに結婚や出産など女性のライフイベントを迎えて退職することになった女性も少なくはないですよね。特に気にすることもなかった健康保険や年金は退職の翌日から再就職先が決まっていない限りは自分で選択し支払う必要があります。そんな面倒な退職に伴う「保険」の種類と知っておけば安く済ませられるお得な情報をご紹介します。

健康保険を失効するとどうなるのか

誰もがおそらく財布やカードケースに入れている「保険証(健康保険被保険者証)」は病院の診察時に持参することで医療費をかなり安く済ませることができます。被保険者の負担率は30%とも言われており、被保険者のメリットは大きいのです。

再就職先ですぐに健康保険に加入できるのであれば問題ありませんが、仮に退職し、無保険状態になってしまうと子供や配偶者などの被扶養者の分も全て100%自己負担になります。自分は風邪も引かないし、独り身だからというのは理由になりません。「国民皆保険制度」の国民として公的医療保険への加入と医療費の支払いが義務となっているのです。

そこでライフイベントなどによる退職に伴い、健康保険への加入方法は以下の3種類あります。

  • 被扶養者になる
  • 国民健康保険への加入
  • 任意継続健康保険者になる

念のため、被保険者と被扶養者について確認しておきましょう。

被扶養者とは、扶養される人のことであり、子供や専業主婦の妻などがこれに当たります。一方被保険者とは保険の対象になっている人のことで、会社で雇用され社会保険に入っている場合は130万円未満の収入などの例外を除いて被保険者とみなされます。

被扶養者になる

パートやアルバイトをしている、していた人にとっては馴染みが深いかもしれませんが、被扶養者になる場合は退職してからの1年間の稼ぎが130万円以下であることが必要です。また被保険者と同居している場合は年収の半分未満の稼ぎであり、別居している場合も被保険者からの仕送り額より少ない状態であることが条件になります。

仮に会社を退職して今後パートを始めることになっても「130万円の壁」を超えないように注意が必要ですね。

また被保険者の条件としては、

  • ・後期高齢者(70歳以上)ではないこと
  • ・扶養する理由があること(この場合被扶養者が無職の状態であること)
  • ・生活費を主に負担している対象であること
  • ・継続的に家計を保つことができる経済的能力があること
  • ・家系の年収のうち50%よりも大きく担っていること

が挙げられます。

被扶養者になるには、配偶者または被扶養者の親族が「被扶養者届」を勤務先に提出することになり、提出は事実発生の5日以内に行わなければいけません。これは氏名の変更があった場合も同様です。

健康保険 被扶養者(異動)届はこちら(pdf)
健康保険 被扶養者(異動)届はこちら(Excel)

国民健康保険への加入

会社を退職して社会保険の効力が失効する場合、国民健康保険への加入が選択肢にあります。国民健康保険は個人事業主や無職の人など保険制度に属さないすべての人が加入することができる保険制度です。

国民健康保険では前年の所得金額に各市町村が定める定率を掛け合わせたものが支払額になりますが、一番高いとされる広島県広島市と一番安い静岡県富士市との支払額の差は実に2倍以上あるとされています。

広島県広島市の場合、
前年の所得金額が400万円だった場合、定率が15.9%であるため、
保険料=400万円×15.9%=636,735円
となります。

一方静岡県富士市の場合、
前年の所得金額が400万円だった場合、定率が7.3%であるため、
保険料=400万円×7.3%=292,000円
となります。

一般的に個人が負担する額としては社会保険の方が安く済むとされており、特に扶養家族が多い場合は社会保険の方が得になります。

なぜこのようなことが起こるかというと、社会保険は個人と企業が50%ずつを負担し合っているため、実際は社会保険に入っている個人と企業が多く支払っていることになるのですが、個人に置き換えると社会保険加入者の方が安く済むというわけです。

国民健康保険への変更を行う際は退職の翌日から14日以内に、退職日の確認できる書類と健康保険の資格喪失証明書を住んでいる市区町村の国民健康保険担当窓口に提出する必要があります。

国民健康保険担当窓口に関しては、各市区町村の公式ホームページをご覧ください。なお窓口では本人確認さえできれば保険料の具体的な金額を確認することができます。被扶養者になるのか、任意継続健康保険者になるのかを検討する意味でも一度聞きに行っても良いかもしれません。

また解雇や雇い止め、退職勧奨などが行われた場合は国民健康保険料の軽減措置が受けられる可能性があります。そういった場合は社会保険よりも断然やすく収まるケースもあるため、適当に決めずにまずは窓口で相談してみるのも良いかもしれません。

任意継続健康保険者になる

加入していた社会保険にそのまま加入することができるのがこの任意継続健康保険者です。

社会保険は会社と個人が50%ずつを払いあう形になっています。ただし任意継続健康保険者になる場合は、社会保険の被保険者として全額を支払う訳ではありません。退職時の標準報酬月額もしくは標準報酬月額の平均額に基づいて決定され、原則2年間は保険料が一律です。

先に計算した年収400万円に合わせて考えると、単純に12(ヶ月)で割って月収33万円となります。33万円を毎月保険料として支払うということであれば広島市よりは安く、また富士市よりは高いということになるのです。

ただし2年間のみとなり、また2年の間で他の保険制度への変更はできないので直近での稼ぎがどれほど出るのかによって国民健康保険とどちらにするか考えた方が良いかもしれませんね。

この任意継続健康保険者になるためには、退職前に継続して健康保険の被保険者期間が2ヶ月以上あること、また退職の翌日から20日以内に健康保険組合もしくは協会けんぽに申請書を提出する必要があります。

まずは支出を減らすことから

結婚や出産という女性の一大イベントを終え、さあ子育てに入ろうとするときに会社への復帰の道が険しく、退職を選ぶ女性は決して少なくありません。

多くの女性たちの悩みが仕事を休職している期間の「お金」です。どんなに制度に恵まれても自分の稼ぎがなければ家計が成り立たなかったり、子供の将来に備えての貯金ができなかったりと追い込まれている人もいます。まずは退職が決まっている今、支出を少しでも減らせるように工夫して無駄にお金が出ていかないよににすることが大切です。