ワーキングマザーの時短勤務はたいへん?デメリット解消のコツ!

幼い子どもがいるワーキングマザーにとって、時短勤務は仕事と育児を両立するための重要な選択肢です。ただし、就業時間が短いゆえの苦労も少なくありません。ワークライフバランスを充実させようと時短勤務に切り替えたのに、かえって毎日が忙しくなってしまう可能性もあるのです。また、時短勤務を申請できる期間が限られている職場にも要注意です。実際に時短勤務を希望する際には、職場の規則をしっかりチェックしてからにしましょう。

この記事では、ワーキングマザーの時短勤務のメリットやデメリット、実践したい心がけなどを解説します。

時短勤務の実態!ワーキングマザーの働き方はどうなっている?

就業規則で定められた労働時間を短縮し、個人のライフスタイルに合わせた働き方をするのが「時短勤務」です。家族の介護や病気など、従業員のさまざまな事情と仕事を両立させるため、多くの企業が時短勤務制度を取り入れています。そして、ワーキングマザーの中にも時短勤務を申請しながら働いている人は少なくありません。特に、乳児期の子どもがいると常に大人が見守ってあげないとならないので、親が時短勤務を申請する必要性は高まるといえるでしょう。

時短勤務が全面施行されるようになったのは2012年7月からです。従業員数が101人以上の大企業については、2010年6月から施行されていました。これ以降、3歳未満の子どもがいる従業員は時短勤務で働けるようになりました。なおかつ、日雇い労働者でなく1日6時間以上働いていることが条件です。さらに、企業側は時短勤務を申請した従業員について、所定労働時間を超える残業をさせてはなりません。

時短勤務の内容はいろいろです。まず、「所定労働時間を短縮する」のは一般的な時短勤務の方法です。通常、多くの企業が8時間前後に労働時間を設定しています。休憩時間を含めれば、9時ごろから18時ごろまで働くことになるでしょう。ただ、こうした条件でフルタイム勤務をしていると、ワーキングマザーの日常に支障をきたします。家事ができなくなったり、託児所に子どもを迎えに行くのが遅くなったりします。そこで、時短勤務を申請し、従来よりも早く会社から帰れるよう工夫するのです。ちなみに、法律では「1日6時間」が時短勤務の条件だとされています。

次に、「フレックスタイム制」で短時間勤務をしているワーキングマザーもいます。フレックスタイムとは、従業員自身が自分の労働時間や始業時間、就業時間を決めるシステムです。この制度では、最初に3カ月(かつては1カ月)の総労働時間を従業員が自分で定めます。そして、その範囲内でどのように働くのかを調整していきます。フレックスタイム制を利用すれば、ワーキングマザーは子どもを優先して仕事のスケジュールを組めるでしょう。出社時間を遅らせたり退社時間を早めたりといったことも柔軟に行えます。

時短勤務の需要が高いのは、産休や育休制度に限界があるからです。厚生労働省は女性が希望した場合、出産前の6週間は休業させなくてはならないと定めています。また、出産後の6週間も強制的な休業となります。2017年3月の育児・介護休業法改正から、最長で子どもが2歳になるまでは育休を延長できるようになりました。企業はこれらの法律を守り、従業員の申請を受け入れる義務があります。ただし、産休も育休も期間に上限が設けられているので、ワーキングマザーは長期的に安心して働ける制度を望んでいます。そこで、育休の期間が終わってからは時短勤務に切り替える人が少なくありません。

2019年、マンパワーグループが行った調査によると、6割以上の企業が時短勤務制度を導入しているとの結果が出ました。さらに、短時間正社員制度を取り入れている企業も全体の25%になりました。出産や育児による離職を防ぐため、時短勤務制度は企業経営にとっても大きなテーマになっています。

時短勤務のメリットとデメリット!意外なストレスが潜むことも

大きなメリットは「ワークライフバランスの実現」です。時短勤務をすれば毎日のスケジュールに余裕が生まれます。無理をせずに仕事と育児、家事を両立できるのでワーキングマザーの暮らしは楽になります。それに、託児所や小児科のある病院のなど、子どもに関係する施設は早く営業が終わるケースも少なくありません。短時間勤務で定時よりも前に退勤すれば、仕事帰りでこれらの施設に寄ることも可能でしょう。フレックスタイム制が認められている現場なら、ワーキングマザーの働き方は育児を考慮しながら決められます。予防接種や乳幼児健診といった大切な予定を組みやすく、そのたびに有給休暇を取得する必要もありません。

次に、「仕事を辞めなくてもいい」のも外せないポイントです。時短勤務が認められていない時代では、出産や育児を経た女性が退社する傾向は顕著でした。手のかかる時期の幼児を見ながら、普通に仕事をこなすのはとても困難だったからです。しかし、時短勤務によって仕事と育児の両立は以前よりも楽になりました。育休期間が終わっても企業が職場復帰をサポートしてくれるため、女性が望まずして退社しなければならない状況は減ってきているといえます。

何より、「子供の側にいられる」ことは魅力です。まだ幼い子どもを長時間預けて働くのには気が引ける人もいるでしょう。子どもの成長をしっかり見守りたい人も多いはずです。時短勤務で仕事のペースを抑え、子どもとのかけがえのない時間に集中するのも立派なワーキングマザーの生き方です。

一方で、時短勤務にはさまざまなデメリットもあります。代表的なものは、「周囲の理解」でしょう。時短勤務自体は法律で義務化されている制度です。要件を満たしている従業員に対し、企業は時短勤務を認めなければなりません。しかし、制度への理解が進んでいない企業だと、申請すること自体をとがめられる雰囲気が形成されてしまいます。もしも申請して時短勤務に切り替えても、周囲の反感を招きかねません。そのような職場では、ワーキングマザーの立場が悪くなっていきます。

さらに、「責任のある仕事を任されにくい」のも覚えておきたい点です。時短勤務の期間中はどうしても残業や休日出勤をすることが減ります。仕事だけに全力を傾けにくいともいえるでしょう。企業側からすれば、そのような従業員に大きなプロジェクトを託すのは難しくなります。結果的に、時短勤務をしている間はワーキングマザーのキャリアが停滞してしまうこともあるのです。キャリアアップを目指す女性にとっては不利な状況に追い込まれる可能性も出てきます。

そして、「本当の意味での職場復帰が遅れる」のもデメリットのひとつです。産休や育休を経て、時短勤務で職場復帰を望むワーキングマザーは少なくありません。ただ、どうしてもフルタイムで働いている従業員との間に仕事量の差は生まれてしまいます。その分、通常業務の感覚を取り戻すのに時間がかかることもあるでしょう。ワークフローや職場での専用ツールが新しくなったときも、勉強し直す余裕をなかなか確保できません。会社に貢献できるレベルへと戻るという意味での、本格的な職場復帰には時短勤務のままだと至りにくいこともあります。

厳密にはデメリットとはいえないものの、時短勤務には対象外となる人もいます。たとえば、勤続期間が1年未満の労働者や1週間に2日以内しか働いていない人は対象外です。仕事の性質に関して、時短勤務には向いていないとみなされたときも申請は通りません。時短勤務は誰でも絶対に認められるものではないので、早い段階で人事部や総務部に相談しておくのが得策です。

時短勤務をするなら覚えておこう!「3歳の壁」とは何か

ワーキングマザーの多くが直面する問題として、「3歳の壁」があります。子どもが3歳を迎えると、企業が従業員の時短勤務を認める義務はなくなります。そのため、子どもが3歳になるタイミングを時短勤務終了の目安にしている企業も少なくありません。こうした職場で働き続けるのであれば、ワーキングマザーはフルタイム勤務を余儀なくされます。これまで時間の余裕があるからこそできていた子どもの送迎や家事もたいへんになっていくでしょう。

さらに、小規模保育園にも3歳の壁はあります。小規模保育園は0~2歳児を対象にしている施設です。そこでは、子どもが3歳になれば親は他の受け入れ先を探さなくてはなりません。しかし、3歳児クラスのある保育園はこれまでの園児たちの持ち上がりを優先しています。3歳になってから新しく入れてもらおうとするには枠が少なく、競争率がかなり高くなってしまいます。小規模保育園に子どもを通わせているワーキングマザーにとって、3歳の壁は深刻な事態だといえるでしょう。

もちろん、フルタイム勤務が可能な環境が整っているなら3歳の壁も乗り越えられます。たとえば、実家が子どもの面倒を見てくれるなら急いで保育園を探さなくてもいい場合もあります。夫が家事や育児に協力的な家庭でも、ワーキングマザーはフルタイム勤務をしやすいでしょう。オフィス内や近辺に託児所を設けている企業も増えており、こうした職場ではワーキングマザーのフルタイムにかかる負担も小さくなります。ただ、これだけの好条件が整ってるワーキングマザーばかりではなく、実際には3歳の壁の厳しさが押し寄せてくることも多いのです。

克服する道を見つけられず、3歳の壁を迎えたとき退職を申し出るワーキングマザーもいます。あるいは、正社員からアルバイトやパートに勤務体系を切り替えて働き続けるのもひとつの方法です。注意点として、勤務体系を変えれば給料は減ってしまうので決断を慎重に行うことが大事です。

ワーキングマザーとして働きたいなら、そもそもの職場選びから工夫してみましょう。会社によっては3歳以上の子どもを持つ従業員に対しても時短勤務を認めていることがあります。そうした会社に絞って職探しをすれば、仕事と家庭を両立させやすくなります。仮に会社が表立って時短勤務の延長を認めていないところでも、従業員から交渉に応じてくれる可能性はゼロではありません。なぜなら、法律では「未就学児を育てている労働者に必要な措置をとる」ことを会社の努力義務としているからです。交渉次第で、会社が柔軟な働き方を提示してくれることもありえます。

注意したいのは、時短勤務を延長してくれる会社でも無条件とは限らない点です。部署によっては仕事内容の関係で時短勤務を認められないこともあります。そのような場合は、「短時間勤務をしたいなら異動してほしい」といった条件を出されるでしょう。また、勤務地が変わってしまう恐れも出てきます。時短勤務の延長については、ワーキングマザーの要望と会社の条件をしっかりとすり合わせて双方が納得できる形を見出しましょう。

時短勤務の給料や仕事の生産性はどうなる?ワーキングマザーの不安を解説

多くのワーキングマザーにとって、時短勤務での給料は不安要素のひとつでしょう。結論から書けば、時短勤務を選ぶと給料が下がる可能性は決して低くありません。なぜなら、改正育児・介護休業法では時短勤務期間中の給料を補償する項目が記載されていないからです。すなわち、短時間勤務をしている間、その分の給料は安くなっても不思議ではありません。時短勤務の目安は「1日6時間」とされているため、「1日8時間労働」の職場だと毎日、2時間分の給料が差し引かれていく計算です。

ただし、「時短勤務だと給料が下がる」という項目が法律に盛り込まれているわけでもありません。時短勤務の正社員について、給料をどのように設定するかは企業の裁量に委ねられています。仮に企業が労働時間ではなく実績で給料を決めているのだとすれば、時短勤務の従業員もこれまでと同等の条件で働けることがあります。たとえば、時短勤務を申し込む前に「短い労働時間でもこれまでと同じ成果を残せるなら給料はどうなりますか」と企業側に聞いてみましょう。「成果を重視して給料は変わらない」という企業なら、時短勤務でも金銭的な不安は解消されるといえます。

なお、賞与に関しても基本給と考え方は同じです。基本給が労働時間に合わせて減るのであれば、賞与も同程度下がる場合が多いでしょう。賞与自体、企業に支給の義務はないので、大幅に下がったりなくなったりすることもありえます。そのかわり、あらかじめ「賞与は全従業員に支給する」と定められているのに、時短勤務の人にだけ支払わないのは契約違反です。就業規則を読めば賞与に関する項目もあるはずなので確認しておきましょう。

給料以外では、仕事の進め方について悩んでいる時短勤務のワーキングマザーもいるはずです。確かに、限られた時間内で一定の結果を出し続けるのは簡単ではありません。自分が上手く仕事をこなせなくなることで、周囲に迷惑がかかるのではないかという不安も生まれるでしょう。ただ、仕事の生産性と労働時間は比例しないといえます。労働時間が短くなることで逆に集中力は上がり、生産性が向上するパターンもあるのです。

具体的な考え方として、時短勤務をきっかけに仕事の優先順位を見直してみましょう。イタリアの経済学者が発見した「パレートの法則」という考え方では、売上の80%は仕事全体の20%から生み出されるとされます。つまり、重要な20%を意識して働けたなら、全部の仕事に全力を傾けなくても大きな結果にはつなげられるのです。労働時間が短くなるからこそ、無駄な仕事に手間取らない工夫をすることが肝心です。

そのほかの懸念事項として、「人事評価」も挙げられます。法律上では一応、企業が時短勤務をしている労働者に対し、そのことを理由にして解雇したり不利益に取り扱ったりするのは禁じられています。時短勤務をして不当な人事評価を受ける可能性は低いでしょう。その一方で、キャリアアップを目指すうえで時短勤務が不利になる場面は出てきます。役職や部署によっては、時短勤務では任せられないと企業側から判断されることもありえるからです。

一方で、時短勤務を始める際にキャリアプランを見直せる企業も少なくありません。こうした職場では、時短勤務でも活躍できる部署へと異動することもあります。労働時間に関係なくのびのびと働けるのであれば、時短勤務はそれほど不利にはなりません。キャリア志向のワーキングマザーにも高い人事評価が下されるケースはありえます。

仕事も育児も両立!時短勤務の期間を充実させるためのポイント

時短勤務で注意したいのは「情報共有」です。出社している時間が短くなれば、同僚との情報共有も難しくなっていきます。大切な仕事の進捗を把握していないまま働いていると、後々にトラブルを起こしかねません。そこで、時短勤務の間は同僚とのコミュニケーションを意識的に行いましょう。些細なことでも報告、連絡、相談を怠らず、相手の話にも耳を傾けます。専用ツールを導入している職場では、自身も積極的に活用することが大事です。ビジネスチャットでは同僚とのやりとりを文章で残せます。タスクやプロジェクトの管理ツールではリアルタイムの進捗をこまめに確認できるので、仕事の漏れが減っていきます。

そのうえで、「分かりやすい伝達」を心がけましょう。時短勤務ではどうしても、同僚に仕事を助けてもらう場面が出てきます。そのようなとき、資料が本人にしか分からない出来だと内容を理解してもらえません。調べ直してゼロから仕事をするようになれば、同僚の負担は増していきます。仕事を頼んできたワーキングマザーへの心象も良くないでしょう。そうならないよう、同僚には口頭と資料の両方でしっかりと仕事内容を伝達しておきます。仕事を頼むだけでなく必要な資料や道具を一式渡して、少しでも相手の負担が軽くなるように努めましょう。

「経験者に相談する」のもひとつの方法です。同じ職場に時短勤務をしている人やワーキングマザーがいるなら、悩みを共有しやすいはずです。相手が時短勤務の先輩ならなおさら、悩みの解決策を聞かせてもらえるチャンスです。これまであまり接点がなかった人でも、自身が時短勤務を始めるタイミングで話しかけてみましょう。境遇が似ている仲間が増えると、職場内での居心地もよくなります。何よりも、お互いに励まし合いながら働けるのでモチベーションも維持できます。

「期間の確認」も必ず行いましょう。法律では、時短勤務が適用されるのは子どもが3歳になるまでとされています。子どもが小学校になるまでの時短勤務を認めるかどうかはあくまでも企業側の努力義務です。しかし、2019年に働き方改革関連法が施行されてからは、従業員の労働環境を見直す企業が増えてきました。それにともない、ワーキングマザーが働きやすい職場を整えようとする動きも出てきています。「3歳までしか時短勤務はできない」と思い込まず、まずは企業側に条件を交渉してみるのが賢明です。

そのほかのトラブルとして、「人間関係」も挙げられます。ワーキングマザー本人は普通に働いているだけでも、周囲が不公平な気持ちを抱いてしまうケースは珍しくありません。そのような状況下で、ワーキングマザーが「手伝ってもらって当然」という態度をとってしまうと同僚の怒りは爆発してしまいます。お互いに衝突を避けるには、些細なことに対しても感謝を示すようにしましょう。「ありがとうございます」「助かりました」といった言葉を忘れず、余裕があるときは相手の仕事も手伝うようにします。ささやかな心配りの連続がワーキングマザーを働きやすくしてくれるでしょう。

ワーキングマザーがキャリアを続けるのに時短勤務は便利!


時短勤務の条件は企業ごとに異なります。給料やキャリアプランに大きな影響もなく働ける職場もあるので、ワーキングマザーを目指すなら事前に人事部へと確認しておきましょう。そのうえで、時短勤務には同僚のサポートも不可欠です。周囲への感謝を忘れず、仕事の情報共有を徹底すればトラブルなく時短勤務を続けていけます。