PReA株式会社・藤村侑加さん|自分に優しくすることで生まれる、仕事と子育ての好循環

化粧品、広告の大手企業やスタートアップ企業における会社勤めを経て、現在はスタートアップ企業を中心に広報戦略立案をはじめ広報PR活動をサポートする会社を設立し、戦略広報アドバイザーを務める藤村侑加さん。転職や妊娠・出産のライフイベントを通して変化したキャリア観や、現在の働き方についてお聞きしました。


藤村侑加(ふじむら・ゆか)プロフィール
PReA株式会社 代表取締役

東京女子大学でコミュニケーション学を専攻し、番組制作やテレビ、ラジオ出演などメディアの仕事に複数携わる。
卒業後はDHCの広告宣伝部において広報を担当。リクルートに転職し、採用コンサルティング営業に従事。その後、複数企業で広報業務やWebマーケティング、採用業務に責任者として携わる。2021年に広報コンサルタントとして独立。2022年にスタートアップ企業への広報支援を行うPReA株式会社を設立し、代表に就任。日本広報学会会員。

子育てと、尊敬できる女性との出会いをきっかけにキャリア観が「成長・挑戦」から「素直な気持ち」を優先するように

昨年スタートアップ企業を卒業し、PReA株式会社という広報のコンサル会社を立ち上げ、同時に東京都ASACの広報メンターとしても活動しています。スタートアップや中小企業に特化し戦略的な広報活動の支援を行うPReAという社名には、私の仕事やクライアントへの姿勢や思いを込めました。Progress(前進)、 Respect(尊重)・Relation(関係) 、Expression(表現)、Acceleration(加速)の頭文字をとっていて、事業に携わる人々を尊重し、さまざまなステークホルダーとの良い関係性を築くコミュニケーションをサポートしたい。誠実に愛情を持って向き合い、事業の加速を後押しするパートナーでありたいという思いでメンバーと共に決めました。
独立以前は、リクルートで採用コンサルティング営業に従事し、DHCをはじめとする複数の企業で広報やマーケティング、採用業務などに携わってきました。プライベートでは5歳娘の母です。

(リクルートの全社アワードでの最優秀賞受賞表彰式の様子)

私は自分にストイックな性格かつ仕事好きなので、今までのキャリア観は経験の蓄積とスキル向上といった「成長・挑戦」軸を何より重視していました。しかし、子育てをし始めてから、この軸で選択する難しさを感じました。今まではリフレッシュし切り替えができていたプライベートタイムを子育てにパワーを使い、また仕事にもストイックに挑戦をしていくと、心身共に少し疲弊してしまったのです。仕事がうまくいかないと、家庭でもそれを引きずってしまいますよね。親の機嫌が悪いと子供にも影響し、夜に全然寝てくれなくて、寝不足になり、ガス抜きができないままで次の日の仕事に突入するとパフォーマンスにも影響が出るという悪循環に陥っていました。「子育てしながら働くことはこれほど不自由なのか」と、何か根本的に変えた方がいいのではと思うようになりました。

キャリア観変容のきっかけはもう一つあり、それはこのインタビューにも以前登場しているレノボ・ジャパン合同会社でCMOのリュウ・シーチャウさんとの出会いです。
彼女は忙しいはずなのに、いつもニコニコと楽しそうで目がキラキラしていて、とてもゆとりのある素敵な方。彼女と食事をした時に「最後は藤村さんが楽しいと思えるかどうかです。」との言葉にとてもハッとさせられました。もう少し自分の気持ちに耳を傾けてもいいんだなと。そうすると彼女のようなイキイキとした素敵な発想の女性になれるんだと勉強させていただきました。

(左:藤村さん / 右:リュウ・シーチャウさん)

そして、最後は日々成長する子ども。今まで見えなかった世の中のさまざまなモノ・コトに目がいくようになり、子どもの笑顔や寝顔は最高の癒やしです。その子が一日10時間以上の集団生活の中で頑張ってくれているから仕事ができており、あらためて「私はなぜ仕事をするのか」「子どもと過ごせる大事な時間を使っているのだから、本当に自分がやりたいと思える仕事をしたい」など仕事について見つめ直すようになりました。
そういった経緯から、現在は「その仕事が楽しめそうか」を最優先に、「この人たちと仕事をしたいか」「クライアントさんと一緒に挑戦できるか」という順で選択しています。

子育てと仕事の両立を支えてくれた3冊の本

私のモヤモヤを払拭(ふっしょく)し価値観を変えた3つの本もご紹介します。これらは今でも仕事と育児両立のためのお守り的な存在です。
1冊目は浜田敬子さん著の『働く女子と罪悪感 「こうあるべき」から離れたら、もっと仕事は楽しくなる 』です。私は両立していく中で、時短は取らず誰より早く出社したり、早朝・就寝後に仕事したりしているにも関わらず、周りの人たちより早く帰ることの罪悪感と、子供を遅くまで預けることの罪悪感、数十年前では当たり前の妻の役割を果たしきれない三重の罪悪感を抱いていました。「ママだと早く帰れていいね」と悪気なく言われたりすると、「母だから」と我慢するべきなのかと迷っていた時にこの本に出会い、自分のモヤモヤを言語化でき、スッキリした気分に。「こうあるべき」から離れたらもっと仕事は楽しくなり、罪悪感を抱く必要がないんだとマインドチェンジすることができました。
2冊目は尾石晴さん著の『ワーママはるのライフシフト習慣術』です。以前は私が家事育児を全部担うものだ、と自分自身に呪いをかけてきたのですが、本書中の「夫婦は家庭の共同経営者」という考え方が刺さり、私だけが家事育児の責任を負う必要はない、夫婦協同で担っていくものだと気付くことができました。夫は4年目の単身赴任で物理的困難はあるものの、今では家事育児に積極的に関わってくれて、頼もしい家庭の共同経営者です。
3冊目は勝間和代さん著の『勝間式 超ロジカル家事』です。以前から「生産性改善」や「効率化・仕組みづくり」が好きなのですが(笑)、それを家事に当てはめるイメージがなかなか湧かなかったのです。この本を読み、家事はなるべくその家事自体を廃止するか家電に任せ、自分の睡眠と休息時間を確保する。「家事もロジカルに進めよう」という言葉に目からウロコでした。
仕事と家庭の両立にヘトヘトだったのですが、この3冊のおかげで再びファイティングポーズを取り直すことができました。

今が一番Happy。自分に優しくしてあげられるようになり好循環に

(子供の誕生日祝いに裏磐梯へ)

現在は、同僚と共にとても楽しく仕事が出来ています。今が一番Happyですね。
意思決定の軸を少しずつ変え、「この人たちと仕事を楽しめるか」という素直な気持ちにフォーカスを当てることで、自分の感情に気付きやすくなり、余裕が生まれた気がします。そして自分に優しくしてあげられるようになったなと思います。
これまでは貢献欲求が強く、自分を犠牲にしてでも相手の要望に応えたい、困ってる人を助けたいという気持ちが強くて、自分がパツパツで苦しくても相手の仕事をカバーをしていたことも少なくなかったです。でも、自分に優しくできないとやっぱりピリピリしてしまい、言動が雑になって空気を悪くしたり信用を毀損(きそん)したりしていたかもしれません。そんな時、父業も全うされている新聞社の方からの「ゆかちゃん、子育てしながら仕事をしていると自分の時間はないよね。だから意識的に思う存分、自分を甘やかしていいんだよ。自分に余裕がないと人にも優しくできないのが人間だから」というアドバイスに救われました。子育ても仕事も中途半端という意識があったのですが「よくやっている」と自分を褒めてあげられるようになると余裕が生まれ、娘にも夫にも優しく接することができ、家庭も穏やかになりました。このような好循環により、働き方を変えた今は、以前よりも安定して仕事にも向き合えています。聞こえはよくないかもしれませんが、思う存分自分を甘やかしています。

リクルートの社訓に背中を押され、今後も領域を広げていきたい

「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」というリクルートの言葉がいつも背中を押してくれます。子どもが2歳を過ぎた頃から、活発な娘には保育園より、区外にあるスポーツ幼稚園の方が合うのではと考えはじめ、仕事をセーブする方法しかないのかなと悩んでいました。しかし、複数の企業と仕事をする形にすれば幼稚園の平日行事にも出れるのではと考え、仕事はセーブせずむしろ少しアクセルを踏んで独立し、会社を設立して、仲間と一緒に楽しく走るということを導いてくれました。
当初の主な対象企業はスタートアップ企業としていましたが、最近は上場企業のご相談も増え、領域が広がってきています。今後は、私の故郷が仙台ということもあり、地方創生にも興味があるので地方の魅力を伝えていきたいとも考えています。
これからも、子育てがあるからと仕事を諦めるのではなく、子供の成長に合わせて、仕事を変化させられる柔軟性と心の余裕を持ちながら楽しく領域を広げていきたいと思っております。

(創業キックオフを兼ねた初の社員旅行にて)