仕事のブランクは、マイナスではなくプラスに働く

株式会社ガラパゴス | 中家ひろみ

 出産や育児で約10年のブランクを経て、2018年にガラパゴスに入社しデザイナーとして活躍する中家ひろみさん。これまでWEB制作会社に勤務したりフリーで仕事を受注したりと、ライフステージに合わせて働き方を柔軟に変えてきました。ロゴやイラスト作成など、グラフィックデザインを手がけるうえで大切にしていることや、キャリアに対してのお考えを伺いました。

チームメンバーは頼れるAI

 質の高いデザインをAI(人工知能)を活用して短期間で作成する「AIR Design」(エアーデザイン)というサービスに携わっています。ロゴやウェブ広告のデザインだけでなく、最近ではランディングページの作成にもAIを導入しました。例えばインターネットに掲載されている企業のロゴを人がゼロから作る場合は、いくつかデザインを作り上げるのに約300分かかります。まずどのようなロゴが良いか検索し、具体的に複数の案に絞ってからデザインを始め、最後にデータ化する。デザインひとつとってみても、完成までには非常に多くのプロセスがあり、それぞれに時間がかかっているのが現状です。

 しかしAIを導入すると、一連の作業は約20分まで短縮されます。世界中のデータの中からフォントや色、デザインのおすすめを自動で選び出し、最後は人間のセンスで決めることで、大幅な時間短縮につながるのです。これまでデザイナーが抱いてきた常識を覆す、画期的なサービスといっても過言ではないでしょう。

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 今ではチームメンバーの一員として、AIと一緒に働いているという思いが自然と芽生えてきました。AIが効率的に仕事を進めてくれるおかげで、わたしたち人間のデザイナーは最終的なデザインの判断など、重要な部分に時間を費やせるのが嬉しいですね。仕事を進めていく上で大切なことは「チームで働く」という意識を忘れずにもつこと。自分のこだわりを持ちすぎるのではなく、より良いアウトプットにつながるよう、建設的に議論をして互いに高めていけるように心がけています。現在社内のデザイナーの9割は女性で、時短勤務の社員もいます。ですがお互いを信頼しているからこそ、誰かが残した仕事を自然と手伝うなど、気持ちよく働ける環境が整っていますね。デザインを手がける上で特に意識しているのは、相手が喜ぶ付加価値をしっかりとつけること。与えられた仕事をこなすだけでなく「どうやって工夫したら喜んでいただけるだろうか」と考え、クライアントの好きな色を少し取り入れてみるなど、ひとつひとつのアウトプットに対して丁寧に気持ちを込めています。

自分のやりたい仕事のために、小さな積み重ねを大切にする

 デザインの専門学校を卒業後、大阪のWEB制作会社から私のキャリアはスタートしました。当時はウェブページを作るための最も基本的な言語のひとつ「HTML」を手打ちしている時代で、米アップルのパソコン「Mac」も日本で発売されたばかり。新しいツールで色々なデザインを手がけることが、とても楽しかったことを覚えています。「自分の市場価値や現状のスキルを確かめたい」という目的もあり、ある時東京の会社を中心に自分のPRを送ってみたところ、想像以上に反応が良くて驚きました。当時はMacを使ってデザインをするデザイナーがまだ珍しかったのでしょうね。次第に自分のデザインに対して手応えを感じ始めたので、入社して2年後にはフリーのデザイナーとして働き始めました。雑誌のイラストを作成したり、ディレクションをしたりと、視野を広げてくれる刺激的な仕事をたくさん経験させていただきました。

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 その後2007年に第一子を出産。子供がすくすくと成長する様子を間近でみて「育児はなんて面白いのだろう」と感じていた一方、続けて第二子を出産したこともあり、仕事にはなかなか復帰できずにいました。しかし仕事から離れたからといって、仕事に対しての思いは消えることはありません。子供がお世話になっていた幼稚園の先生やママたちに「ボランティアでもいいのでイラストを書いてもいいですか?」と提案するなど、積極的に自分のスキルアップや仕事につながりそうなことを見つけて、自ら手を上げていました。手がけたデザインをみて喜んでいただけるととても嬉しかったですし、やはりいつかは仕事に復帰したいという気持ちも膨らんでいきました。

 そういった小さな仕事が点と点でつながったおかげで、友人の務める会社でデザイン関連のアドバイスをしたり、スポットでの仕事をいただいたりと、少しずつ仕事への広がりが見えてきました。本格的に仕事に復帰する前にワンクッション挟めたのは、とてもよい機会だったと思います。たとえ育児中であったとしても、日常生活のなかには自分の仕事につながる機会や収穫がきっとあるはずです。「なんとなく気になるから調べておこう」「私だったらこんな風に解決するかな」など、ちょっとした気付きをそのままにせず、小さな一歩を踏み出してみる。そういった積み重ねが結果的に自分のキャリアにもつながるのではないでしょうか。

 

新しいデザイナー像を見つけていきたい

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 これまでデザイナーという職種は、夜遅くまで働き拘束時間が長く、ハードなイメージが強かったように思います。しかし現在はガラパゴスで時短勤務で働いたり、子供の都合によって休みを取得したりと、ありがたいことにとても柔軟に働くことができています。出産育児を挟んだ約10年という長いブランクを経て仕事に復帰するのはもちろん不安もありました。しかし意外だったのは「ブランクが仕事にいきる」という大きな発見があったこと。常に仕事の現場にいなかったからこそ業界の小さな変化に気付けたのは、私にとってとても新鮮な経験でしたね。

 例えば仕事に復帰して久しぶりに通勤電車に乗った時に感じたのは「乗客の持ち物が随分と変わり、トレンドも大きく変わったのだな」ということ。女性が持っているバックがブランドものから実用的なリュックに変わっていたりと、デザインに関しても大きな変化を感じました。電車内の広告も私が10年前にデザインに携わっていた時と比べてロゴのトレンドが変わっていた印象がありました。業界の最先端に立ち続けていなくても、インターネットやSNSで必死になって情報を収集しなくても、身の回りの小さな変化がビジネスや仕事につながることは多いのではないでしょうか。

 今テクノロジーはものすごいスピードで進化していますし、私たちの働き方も大きく変わってきています。たとえブランクが長い女性であっても、怖がらずぜひチャレンジしてみてください。これまでの常識を超えて、きっと新しい発見や気付きを得られるはずです。私もデザインに対しての想いを大切にしながら、これまでとは違った新しいデザイナー像を探し続けていきたいなと思います。

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