時短勤務に関する法律は知っておくべき?制度を利用する際に必要な条件とは

仕事と家庭を両立したいワーキングママにとって関心の高い制度に「時短勤務」があります。仕事はしたいけれども子どもとの時間も確保したいママやフルタイムで働きたいものの子どものお迎えなどの事情から働けない人など時短勤務を求める理由は人それぞれあるものです。

そのため、出産や育児から仕事への復帰を考えている人のほか、すでに働いている人のなかにも可能であれば利用したいと考えている人は少なくないことしょう。しかし、いざ時短勤務が必要な状況となったときに誰でも時短勤務ができるのでしょうか。この記事では、時短勤務の法律的な観点からみる導入の義務や条件、さらには利用できない場合の事例についても併せて解説します。

そもそも時短勤務とは

時短勤務とは1日の労働時間を短くして働くことです。正式には「短時間勤務」といいます。短時間勤務の制度では、1日の所定労働時間を6時間とすることが原則です。所定労働時間とは会社との契約で決められている労働時間を指します。ただし、所定労働時間を通常7時間45分としている会社については1日の所定労働時間を5時間45分に短縮することも許容されています。

かつての日本では正規雇用で働くすべての従業員に対して同じ定時が設けられていて、同じ時間に出勤し同じ時間に退勤することを基本の働き方とすることが一般的でした。また、定時外に遅くまで残業して長時間勤務となることがあっても当然とみる風潮を持った会社も少なくありませんでした。

ところが、ライフスタイルや価値観における個々の違いが広がりを見せるなかで、働き方にも多様性が求められるようになっています。働く人それぞれに合ったワークバランスを保てる働き方が注目されているのです。また、日本では少子高齢化が今後ますます進むと予想されていて、それもまた、労働者の働き方を変えるべきという考えにつながっています。15歳以上65歳未満の生産年齢人口が減少し、労働現場での人手不足が課題となっていることから、より多くの人に働いてもらえる社会とすることが重要視されるようになっているのです。ワーキングママも社会が労働を求めている生産年齢に該当する人が多く、出産や育児があっても働きやすい社会にすることは労働者数を増やしたい日本にとって非常に大切なこととされています。

実際に、フルタイムから時短勤務に変えて働くことができれば労働時間が減る分、時間に余裕を持つことが可能です。働きながら育児をしている人が最低限やるべきことをこなすだけの生活を送るのではなく、家事をこなしながら子どもとの時間を作ることもできます。また、定時後すぐに向かっても間に合わなかったような病院や公共施設などの利用もしやすくなります。通院が必要な子どもがいたり、大事な子どもの手続きが必要だったりするときでも安心です。

ただし、実際に時短勤務制度を利用すべきかを迷う人もなかにはいます。収入が減ってしまうことへの不安を感じてしまったり、ほかの人よりも早く帰ってしまうことに引け目を感じてしまったりすることがあるからです。そもそも、時短勤務制度は誰でも利用してよいものなのでしょうか。次では、時短勤務を利用する権利について解説します。

時短勤務は法律で定められている制度

時短勤務をすることは一定の条件に合った人であればすべての労働者が持つ権利です。育児のために時短勤務を選択できることは育児・介護休業法に定められています。育児・介護休業法とは「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」が正式名称で、1991年に成立した法律です。名前のとおり、育児と介護について定めた法律で、育児や介護を行う人であれば女性だけではなく男性も対象となります。

古くは、男性が労働し、女性は家事や育児、介護をこなすというのが一般的な家庭での役割分担でした。しかし、時代とともに女性も男性と同じように働く人が増えています。そのため、家庭内での役割を性別で決めることなく、誰しもが仕事と家庭を両立できるような社会となることが求められていて、それを支援することを目的に育児・介護休業法が作られました。法律には育児に関して育児休業や子どもの看護休暇などに関する内容が盛り込まれています。法律の成立後、社会の変化に合わせて内容は部分的に改正され続け、時短勤務制度は2009年6月の改正時に育児・介護休業法内に新設されました。

時短勤務制度の導入は事業主の義務!具体的な導入条件と実際の導入状況は?

時短勤務は労働者が権利を持つ制度であるとともに、事業主にとっては導入を課されている制度です。一定の条件に該当する従業員が時短勤務を望む場合にきちんと利用できる制度を整えることが事業主に求められています。法律における時短勤務の利用条件は5つです。1つ目は養育中であることで、育てている子どもは3歳未満でなければなりません。子どもは以前の制度では法律で親子関係にある場合に限定されていましたが、2016年の法改正により養子縁組をした里親に委託されている子どもや特別養子縁組の監護期間である子どもも対象とされています。

2つ目は1日の所定労働時間が6時間を超えていることです。ただし、月や年単位で調整して働く変形労働時間制を導入している場合、労働したすべての日について所定労働時間が6時間を超えている必要があります。労働した日における一日の所定労働時間の平均時間が6時間を超えていればいいわけではないことに注意しましょう。

3つ目はその日その日に雇用されている労働者ではないことです。たとえば、日雇い労働者などは時短勤務の制度利用者として対象外となります。4つ目として時短勤務を行う以前の育児休業の利用状況も判断基準です。原則子どもが1歳の誕生日前日まで、最長では2歳まで育児のために休業を取得できる育児休業制度を利用していないことが条件とされています。

5つ目の条件は労使協定で適用除外とされていないことです。労使協定とは企業と従業員の間で協議して定めた取り決めをいいます。労使協定で適用除外となり得る人とは、たとえば、入社1年未満の労働者です。また、1週間の所定労働日数が2日以下でも対象外となる場合があります。さらに、担当している業務の性質や実施している体制上の問題から時短勤務の実施が難しいと判断されると制度を利用できません。時短勤務を実施できる業務であるかどうかの判断は事業主の判断にゆだねられていますが、客観的に見て問題なければ通常は利用できます。これらの5つの条件をすべて満たしていることが時短勤務をする際には必須です。条件さえ満たしていれば、正規雇用の従業員だけではなく、派遣やパートタイムで働く人でも原則として対象となります。

仕事と家庭の両立を望むワーキングママたちにとって大きな助けともなり得る時短勤務ですが、制定されたときに導入が義務付けられていたのは従業員数が100人を超える企業だけでした。しかし、2012年に法律が改正されたことで従業員数が100人以下の企業も対象とされています。ただし、実際にはすべての企業で導入されているわけではありません。厚生労働省が公表している「令和元年度雇用均等基本調査」によると短時間勤務制度を導入している企業は全体の67.4%です。同じく育児・介護休業法で定められている所定外労働の制限についての制度を導入している企業は60.2%で、それよりは導入状況は進んでいます。また、前年である2018年に短時間勤務制度を導入していた企業は65.1%、前々年の2017年に導入していた企業は66.4%であることから導入は年々増加傾向です。

加えて、同じく2019年の「雇用均等基本調査」で明らかになった各企業の最長利用可能期間の設定状況をみると、短時間勤務制度を導入している企業のなかでも対象とする子どもの年齢の対応に違いがみられます。最長利用可能期間の設定で最も多いのは子どもが3歳未満を対象としているケースです。制度を導入している企業の半数以上となる55.7%の企業が法律で定められた規定に従った期間を設定しています。続けて多い設定期間は小学校の就学が始まるまでと小学校入学以降を対象としている企業で割合は全体の39.7%です。さらに、小学校の就学が始まるときまでで設定している企業の割合は全体の15.3%となっています。企業によって最長利用可能期間の設定は異なるため、制度の利用を考えているのであれば、具体的な内容を事前に確認しておきましょう。

時短勤務制度はどのようにして導入されているの?就業規則に定められる内容とは?

より一層時短勤務が求められる社会になれば、そもそも導入は義務であるため、現時点で行っていない企業も今後制度を導入することが考えられます。時短勤務が制度として取り入れられる場合、まず企業は導入する内容を就業規則に記載することが必要です。具体的にどのような内容にするかについては制度を導入する意義や目的を明確化したうえで検討され、従業員の意見を聴いたり、取締役会の承認を得たりなどした後、所轄の労働基準監督にて変更の手続きが行われます。就業規則の変更の手続きが完了したら、制度があることや利用できることを従業員に周知することも企業の役割です。制度について従業員が確認できなかったり、広く知られていなかったりする企業は役割を十分に果たしていないと理解してもよいでしょう。

ちなみに、就業規則に定められる時短勤務の規定内容とは、対象となる人の条件や適用期間、制度利用者の労働時間、処遇などです。対象者は必ずしも育児をする人だけではなく、介護を行いたい人や病気などの治療が必要な人なども含まれます。また、労働時間については法律で定められている内容を踏まえたうえで設定されていて、1日の所定時間が6時間以下になると法的に対象者から外れます。

さらに、後でトラブルが起こることを防ぐために、仕事内容やそれに対する賃金など、時短勤務になることで変わる処遇について企業は就業規則内にきちんと明文化しておくことが通常です。育児・介護休業法では労働時間を短縮した場合の賃金に対する保証の規定はなく、時短勤務を行った従業員に対してフルタイム時の賃金を維持する義務はないとしているため労働者は注意しなければなりません。たとえば、時短勤務により労働時間を70%に減らした場合、多くの企業では、基本給もこれまで支給されていた金額の70%になります。ただし、裁量労働制による働き方であれば、労働時間の短縮が賃金に影響されないこともあります。もともと実際の労働時間と関わりのないみなし労働時間が定められているからです。また、賞与は、もともと日々の労働時間から算出されるものではありませんが、査定期間中に働いていなかった日があるなどの理由から支給を減らす会社も少なくありません。なかには一切支給しない会社もあります。

一方、残業代についてはフルタイム勤務と同じ対応です。たとえば、フルタイムで8時間勤務のところを時短勤務により6時間で働いていた場合、8時間勤務を超えて働いた場合には残業代は出ます。しかし、7時間働いても8時間働いても残業代は支払われません。ただ、そもそも時短勤務でありながらフルタイムと同じ時間あるいは残業を行っていては意味がありません。時短勤務が予定通りに遂行されていないのであれば、状況を見て残業を制限してもらう所定外労働の免除を事業主に請求しましょう。

加えて、時短勤務の規定内容における注意点として、労働時間が減って給与が下がれば社会保険料も多少とはいえ減額することに気を付けなければなりません。さらに、標準報酬月額が下がれば将来受け取れる年金額も減ります。厚生年金の保険料は標準報酬月額をもとに算出するからです。ただし、「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」を受ければ、年金額を下げずに済みます。短時間勤務制度の利用により標準報酬月額が下がった場合には、出産前の標準報酬月額で算出した年金額を受け取れるみなし措置があるからです。みなし措置を受けるためには事業主を通して手続きを行わなければなりません。事業主から日本年金機構へ「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」を提出する必要があります。就業規則の規定は企業ごとに検討されているため勤務先によって時短勤務に関する規定内容が異なる場合もありますが、労働者には自分が働く会社で時短勤務の制度について知る権利があるため、利用を考えているのであれば確認するとよいでしょう。

時短勤務の制度を利用する方法

時短勤務をしたい場合、条件さえクリアしていれば自動的に利用が許されるわけではありません。自分から会社に請求して初めて利用できます。そのため、制度の利用を考えているのであれば、自分で動くことが必要です。まずは自分の会社に時短勤務ができる制度があるかどうかを就業規則で確認しましょう。また、その際には対象となる5つの条件すべてに該当しているかどうかをあらためてチェックしておくことも大切です。

自分が制度を利用できる対象であることが確認できたら、企業ごとに定められている方法に従って手続きを進めます。その際には、前もって上司にも相談しておかなければなりません。時短勤務を始めることで上司は担当する業務を調整したり、状況によっては人員を調整したりしなければならない場合もあるからです。時短勤務を行う予定の時期や何時から何時までの勤務を希望するかなど具体的な内容を事前に上司に伝えておきましょう。相談する時期は遅くて育休から復帰する1カ月前、余裕を持つなら3カ月前までが目安です。さらに、時短勤務することが正式に決まったら、自分の業務に関わるほかの従業員にもその旨を伝えておいたほうが周囲の理解を得やすくなります。

有給制度や退職についてはこちら:

育児短時間勤務制度とは?働きやすい職場を考える

時短勤務の制度は忙しさに苦しむワーママならチェックしておきたい魅力ある制度

時短勤務は法律でも導入が義務付けられている制度です。多様化する働き方の一つとして必要となる人の利用が推奨されています。一時的に収入が減ってしまうといったデメリットもありますが、仕事との両立に苦しんでいたり子どもとの時間が取れずに悩んでいたりする人にとってはメリットのある制度です。これから出産を控えている人や将来子ども持つことを予定しているワーキングママは制度についてチェックしておくとよいでしょう。

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