男性育休50.9%時代の共育て。調査が示した「両立の分かれ目」とは

2026年7月31日、厚生労働省の会見室で「共育(トモイク)プロジェクト」の記者発表が行われました。同日公表された令和7年度雇用均等基本調査では、男性の育児休業取得率が50.9%と初めて5割を超え、過去最高を更新しています。
数字だけを見れば、男性の育児参画は大きく前進したように見えます。しかし同時に公表された若年層1万5,845人への意識調査は、「取得率」の先にある希望と現実のギャップを浮かび上がらせるものでした。
QOOLキャリアは共育プロジェクトのメディアパートナーとして、この記者発表に出席しました。本記事では、現地で取材した調査結果のポイントと、推進委員・上条厚子さんから編集部に寄せられたメッセージをお届けします。
目次
男性育休は50.9%へ。それでも「安心」とは言えない理由
令和7年度雇用均等基本調査によると、育児休業取得率は女性が88.3%、男性が50.9%。男性は前年度の40.5%から10.4ポイント上昇し、初めて5割を超えました。一方で取得期間を見ると、男性は「1〜3か月未満」が30.3%で最多と、女性に比べて短期間の取得が中心です。

では、これから子育てを迎える世代は育休をどう捉えているのでしょうか。共育プロジェクトが2026年6月に実施した「若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査(速報)」(全国17〜39歳の男女15,845人が回答)では、子どもを持つことを希望する人の87.2%が育休の取得を希望し、そのうち68.6%が1か月以上の取得を望んでいました。若年層が求める育休は、数日だけ取得する、いわゆる「取るだけ育休」ではないということが、本調査から明らかになっています。

希望は「5対5」、実現できているのは2割
調査で象徴的だったのが、家事・育児の分担についての設問です。
配偶者・パートナーがいる子育て中の社会人のうち、分担割合の希望は「5対5」が38.4%で最多でした。しかし、実際に5対5を実現できていると答えた人は20.8%にとどまります。「実現できている」の回答は男性25.4%に対して女性15.6%と、夫婦間の体感差もにじみ出ています。

働き方にも同じ構図があります。希望する働き方ができている人は、子どもが生まれるまでは66.4%。それが子どもが生まれたあとは50.6%まで下がります。特に女性は72.7%から51.5%へと、落差が大きくなっていました。

一方で、配偶者・パートナーが今より積極的に家事・育児に関わるようになった場合の影響を聞くと、女性は家事の負担量(64.6%)だけでなく、キャリアの自由な選択(39.4%)、収入や就業状況(44.7%)、家族全員の幸福度・充足感(62.3%)まで、全項目で「プラスの影響がある」と回答しています。夫婦の分担は、家庭内の問題であると同時にキャリアの問題でもあるのです。

分かれ目は「夫婦の情報共有」にあった
では、希望する働き方ができている人と、できていない人は何が違うのでしょうか。今回の調査で新たに設けられた設問が、その分かれ目を示しています。

希望する働き方ができている人は「お互いの勤務予定や繁忙期を共有している」が41.5%と、できていない人の26.5%を15.0ポイント上回りました。「家事・育児の分担について定期的に話し合っている」も40.7%対32.6%と差がつきます。逆に、できていない人の側で唯一高かった項目は「特に行っていることはない」(29.1%対15.6%)でした。
制度や職場環境の前に、まず夫婦がお互いの仕事の状況を知っているかどうか。取材した編集部にとっても、この数字は今回の発表で最もはっとさせられたポイントでした。
推進委員・上条厚子さんからのメッセージ
この「家庭内のコミュニケーション」という論点を、現場で長く見つめてきたのが共育プロジェクト推進委員の上条厚子さんです。上条さんはNPO法人ママライフバランス代表理事として、企業版両親学級「親のがっこう」を主宰し、のべ2万人以上の父親・母親の育児支援に携わってきました。発表当日、上条さんにお聞きした見解を、会場の熱気が伝わるよう、ほとんどいただいた原文のままに、皆様にもシェアさせていただきます。

まず上条さんが強調するのは、男性育休の「50%超え」はゴールではない、ということです。
過去最高の数字なので、喜ばしい一方で、=(イコール)男性の育児参画が進んだよねという社会変革は“まだです”ということを合わせてお伝えしたいです。
そのうえで、当日発表された若年層調査の結果を4つのポイントに整理します。
(1)希望する家事育児分担割合は5対5が4割で最多であるが、実際は約2割の夫婦しかそれを実現できていない
→家庭内の家事育児負担感は依然として女性に偏っている(2)子育て中の人が企業に求めることの第5位(24.8%)、4人に1人が「家事育児分担の見直しに関する支援」と回答
→家庭内の家事育児役割分担の適正化を企業がサポートすることは、企業の社員のキャリア支援(キャリアアップ思考がある人の応援になる)になる
→家庭内の家事育児役割分担の適正化を夫婦だけで(本人たちだけで)行うことが難しいということ(3)仕事と育児の両立に積極的に取り組みたい、と考えている場合、「両立できる環境があればキャリアアップしたい」との回答割合が21.9ポイント高い
→両立したい=キャリアブレーキをかけたいわけではない。上司側の認識のアップデートが必要
→両立できる環境(家庭内の家事育児分担支援を含む)を整える介入を企業が行っても、しっかりリターンが返ってくるということ(4)希望する働き方ができている人は、配偶者との会話で家事育児の分担について定期的に話し合っている、との回答割合が最も高く、「配偶者と特に行っていることはない」と回答した人は希望する働き方ができていない
→両立がうまくできている夫婦は、情報共有の頻度や量が多く、家庭内の夫婦の関係性は共働き世代にとって最重要項目であることがわかる
この読み解きを、上条さんは自身の実践で裏づけます。
私はこれまで、のべ2万人以上の令和のパパママの育児支援実績から開発した独自のプログラム「親のがっこう」という、企業版両親学級を行ってきました。「親のがっこう」は、育休に入る前の(妊娠期の)夫婦にご受講頂き、家庭内で共育てができるようになるための夫婦コミュニケーションを習得頂いております。
受講後に、育休→復職した生徒さんたちは“チーム親”として共育てができており、夫婦で子育ても楽しみ!夫婦でお互いのキャリアも応援し合う!という様子を報告してくださっています。今回の調査結果は、私が仮説をもってスタートした「親のがっこう」のプログラムが、導入頂いている企業様の課題解決の一助を担えている証明ともいえる内容でした。
そして、企業の役割についてはこう力を込めました。
『会社が社員個人の家事育児を支援するために、費用負担するのは、、どうかな。個人のことだから』。耳にタコができるほど聞いてきましたが、時代は変わりました。
『会社が家庭の家事育児役割分担の適正化を支援することは、社員のキャリア支援と直結するキーファクターです』と、これからは、声を大にしてお伝えしていきます。
(共育プロジェクト推進委員/NPO法人ママライフバランス(親のがっこう)代表理事 上条厚子さん)
「両立したい」は「キャリアにブレーキを踏みたい」ではない
上条さんのメッセージにもあるとおり、調査では、仕事と育児の両立に積極的に取り組みたい層ほどキャリア意欲が高いことが示されました。「両立できる環境があればキャリアアップしたい」と答えた割合は、全体の42.8%に対して両立積極層では64.7%。21.9ポイントの差がつきました。

働き方の希望も変化しています。子どもが生まれたあとの働き方として、男性は「フルタイムで定時帰宅したい」が41.9%で最多。女性は「短時間勤務をしたい」36.1%に「フルタイムで定時帰宅したい」29.6%が続きます。復職面談で当然のように時短勤務を前提にする対応は、実は本人の希望とずれているかもしれません。

これから子育てを迎える層(学生および子どもがいない社会人)が予想するハードルにも、男女差が表れています。「勤務時間を柔軟に調整しにくい」は女性33.8%・男性23.5%、「仕事と子育ての両立について上司・管理職の理解が得にくい」は女性34.2%・男性23.4%。仕事を減らしたいのではなく、状況に応じて自分で調整したい。そんな声が読み取れます。
そして、自分の職場を子育てと両立しやすいと感じている人が「働き続けたい」と答えた割合は78.0%。両立しにくいと感じている人の33.1%とは、44.9ポイントの開きがありました。転職・就職活動で女性が知りたい情報の上位は「女性の育休取得率」(34.1%)と「出産・育休後の復職率」(28.3%)。見られているのは取得率だけでなく、復職後に働き続けられる実態です。

今日からできる一歩、会社に求めていいこと
夫婦でまず始めやすいのは、勤務予定や繁忙期の共有です。共育プロジェクトの公式サイトでは、夫婦で家事・育児の分担を可視化する「共育てシート」などのツールが公開されています。会見では、育休復職者向けセミナーにパートナーの同席を求める企業研修が増えているという現場の変化も紹介されました。
会社への希望を伝えることも、わがままではありません。子育て中の人が企業等に求めることの上位は、「業務量の適正化」(37.5%)、「上司・管理職の理解促進」(32.5%)、「長時間労働・残業の削減」(29.6%)、「制度を利用しやすい雰囲気づくり」(27.6%)、そして「配偶者・パートナーと家事・育児を分担しやすくするための支援」(24.8%)。国の調査が、両立への希望を職場に伝えてよいことを裏付けています。
推進委員で産業医の平野翔大さんは会見で、両立支援を「福利厚生ではなく人材戦略」と捉え直す必要性を語り、「子育てはあと19年続く。キャリアにとっても大事な20年」と、育休後の長い時間に目を向けました。取得率50.9%はゴールではなく、共育ての入り口。まずは今夜、パートナーと来週の予定を共有するところから始めてみませんか。
出典・調査概要
- 厚生労働省 共育(トモイク)プロジェクト「若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査(速報)」(2026年7月31日公表):全国17〜39歳の男女15,845人が回答。2026年6月13日〜17日にWEB調査で実施。本記事の数値は速報値です。
- 厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」(2026年7月31日公表):育児休業取得率(女性88.3%・男性50.9%)、取得期間の分布。
- 共育(トモイク)プロジェクト公式サイト:「共育てシート」等の家庭内コミュニケーションツール。
※QOOLは、厚生労働省委託事業「共育(トモイク)プロジェクト」のメディアパートナーです。
編集後記

制度の数字は年々前進しています。それでも当事者が両立の手応えを感じるには、職場の環境と、家庭でのパートナーとの日々のやりとりが土台であるように感じます。
かつて、その土台づくりは「自分で頑張ること」とされ、先人たちがそれぞれの工夫と我慢で乗り越えてきたものでした。いまは、会社に支援を求めてよく、夫婦で分かち合ってよく、希望する働き方もひとつではないです。その変化を、調査の数字が裏付けています。
QOOLはメディアパートナーとして、これからも共育ての「実態」と「イマ」を伝えていきます。
QOOLは、厚生労働省「共育(トモイク)プロジェクト」のメディアパートナーとして、共働き・共育て世代に向けた情報の発信を行っています。

