育休や子育てはブランクではなく自分自身をアップデートする機会になる(株式会社NOKIOO 小田木朝子さん)

育休中の女性を対象にしたオンラインスクール「育休スクラ」を運営する小田木朝子さん。2児の母として育児と仕事に取り組みながら、育休中の女性のキャリア支援やスキル開発を手がけています。「女性特有のライフステージを迎えても、いきいきと自分の人生やキャリアを選んでほしい」と語る小田木さんに、育休スクラに込めた想いやメッセージをお伺いしました。

スムーズな職場復帰に必要な、再現性のあるノウハウを届ける

育休中の女性を対象にしたオンラインスクール「育休スクラ」を運営しています。「仕事と育児の両立に関する不安を解消したい」「復職後も仕事で活躍したい」という想いを抱く女性に向けて、これからのキャリア・働き方に必要な考え方やビジネススキルを習得する機会を提供しています。

ほとんどの参加者が子どもと一緒に参加します。ビデオ会議システムのZoomなどを活用し、自宅に居ながら参加でき、ワークや対話を取り入れたアクティブ・ラーニングの活きた学びを提供できるのが特徴です。

受講者からは「仕事がこれまでの3倍楽しくなった」「今まで失敗していた課題の分析につながった」「人生が変わった」など、とても嬉しいコメントをいただいています。こうしたメッセージにも表れているように、育休期間はお子さんの成長を側で見守りながら、ご自身のキャリアや働き方を見直し、これから必要になるスキルを磨く貴重なチャンスになると私たちは考えています。

誰でも経験のない両立、これまでと同じ時間の使い方ができない状況での職場復帰となると、様々な不安や悩みを抱えてしまいがちですよね。しかしこれまで多くの女性が直面してきた壁や課題というのは、事前に知っていれば解決できるはずのものも少なくありません。だからこそ私たちは「知っていれば誰でも再現できるスキルやノウハウ」の提供にこだわり、スムーズな職場復帰、さらにその後のキャリアの充実に必要なサポートを手がけています。

子育てを機に、目の前の働き方や将来のキャリアに初めて向き合った

「育休スクラ」のサービスは、私自身の原体験から生まれました。それは第一子の出産後に復職した時のこと。法人営業だった私はこれまでと同じ塩とに復帰したのですが、なかなか思うように仕事の成果が上げられない状況に陥ってしまいました。もともとは自他共に認める「仕事大好き人間」だったのですが、仕事が楽しいと感じられなくなりました。そして、そうした状況を両立のせいだと思い込み、「子育ては仕事の足かせになってしまう」と感じ、心身ともに疲弊してしまったのです。

なぜ私は仕事が楽しいと思えないのだろうかーー。迷走しながら3年ほど考え続けて辿り着いたのは、自分が何のために働き、これからどうしたいのかという指針が全く見えていないという、自分自身の内面の問題でした。
もうひとつは働き方の問題です。これまでの「時間ありきの生産性」「1人で抱えて成果を上げる仕事のやり方」を見つめ直し、仕事スキルや時間の使い方、周りとの関係の築き方などを再考する必要があったのです。

独身時代は自分の時間をたっぷり仕事に費やすことができましたので、仕事が終わらなければとにかく残業していましたが、出産後はそうもいきません。仕事と子育ての両立は2年や3年で終わるものではなく、マラソンのように長期間続くもの。「このままではいけない、働き方を根本的に変えなくては」。こう覚悟が決まってからは、自身のキャリアを見つめ直し、チームとして最大限にパフォーマンスを出すためにはどうしたらよいかを考えるようになりました。すると、仕事に対しての満足感も徐々に高まっていきました。

実は私は復職後にプラスになればと考えて、育休中に中小企業診断士の資格も取得していました。ですが振り返ってみると、そのときの私に必要だったのは知識ではなく、キャリア構築や働き方に関するノウハウと技術。これらをしっかりと身につけておけばあんな苦労はしなかったと思っています(笑)。

だからこそ育休スクラでは、資格や認定といった目に見える「ハードスキル」ではなく、コミュニケーション能力や思考力、キャリア設計力といった、目に見えない定性的な「ソフトスキル」を磨く機会の提供にこだわっています。

出産や子育てといったライフイベントは、自分自身を進化させるチャンスになる

現在2人の小学生の子どもを育てており、早寝早起きの生活を送りながら、集中して仕事に向き合う時間を確保するようにしています。夕食後には夫と一緒に30分ほど散歩をして、色々な話をしていますね。心身のコンディションは仕事のパフォーマンスに大きく影響を与えるので、健康管理には特に注意しています。

育児と仕事の両立には、やはり家庭内や夫婦間の連携が不可欠ではないでしょうか。私の場合は育休から仕事に復帰するタイミングをめぐって、夫とうまくコミュニケーションが取れていない時期がありました。というのは、お互いがただ意見を言い合うだけで、その意見に至った過程や想いまでは伝えられていなかったのですよね。そのため現在は、お互いにより丁寧に自分の意見や意図を伝えるようにしています。

これからは育休スクラを必要としてくれる方々の期待にしっかり添えるよう、事業を着実に育てていきたいと思います。何よりも「仕事が楽しい!」と言い合える女性たちが増えていくことが、私自身が事業に取り組むことの大きなモチベーションになっています。

これまでのキャリアを振り返ってみると、私は出産や子育ていう働く上での大きな環境変化があったおかげで、仕事にも良い影響がたくさんあったように感じています。そうでなければ、気合と根性で仕事を乗り切る方法を続けてしまい、更には同じ手法を他人にも強要してしまっていたかもしれません。出産や子育ては決して仕事のブランクではなく、自分自身をアップデートするチャンスになります。「その仕事だったら、私は笑っていられる?」「その選択肢を選んだら、人生は楽しい?」とご自身ならではのものさしをもって、これからの仕事や人生を選び取っていただけたら嬉しいです。

>>関連記事:育休中に転職すると育児休業給付金はもらえない?育児休暇時の転職リスクを解説!